「そうですね、はい。“信頼できない”と言われたので、はい」

2026年10月1日、広島カープから戦力外通告を受けた小園海斗選手が、報道陣の前で最初に口にした言葉です。

背景にあるのは、チームメイトの逮捕から始まった、法律で禁止されている薬物「ゾンビたばこ」の騒動で、小園選手も7月に週刊誌の写真をきっかけに疑いの目を向けられています。

昨年の首位打者でもある小園選手がうつむいたまま短い返事をくり返す映像が広まり、「態度が悪い」「反省していない」という声が一気に上がりました。

 

あの映像を見たら、そう感じるのも無理はないと思います。

ところが同じ日の夕方、小園選手は自分のInstagramに、会見での受け答えとはまるで違う長い文章を載せていました。

今回は、会見で何を聞かれて何と答えたのか、その裏で何が起きていたのかを、戦力外通告の仕組みとあわせてわかりやすく解説していきたいと思います。


「そうですね」が続いた会見

映像だけでは、質問の中身までは聞き取りにくいですよね。

報道によると、小園選手は球団から通告を受けたあと、スーツ姿で、うつむいた表情のまま報道陣の取材に応じたとのこと。

ネットで「会見」と呼ばれていますが、準備をして臨む記者会見ではなく、通告のあとに報道陣に囲まれて答える囲み取材でした。

主なやりとりは、次のように伝えられています。

  • 球団からどんな言葉があったか →「そうですね、はい。“信頼できない”と言われたので、はい」
  • それを聞いてどう思ったか →「そうですね、はい。仕方ないかなと思います」
  • 今後について →「何にも考えてないです、まだ、はい」
  • 野球を続けたい気持ちは →「うーん、どうなんですかね、ちょっとわかんないです。すいません」
  • やめる選択肢もあるのか →「いや、はい。できるんだったらやりたいですけど」

文字で読んでも、「そうですね、はい」と「はい」が何度もくり返されていました。

可哀想だと思っていたのに、映像を見て気持ちが変わった、という声です。

ネットには「そーすね言ってる時点でダメだな」「ファンとしてこの態度は許せん」と、あきれと怒りの声が並んでいます。

「はぶてる」は広島の言葉で、すねる、ふてくされるという意味です。

この投稿のように、ファンへのお詫びの言葉が聞けなかったことへの怒りも目立ちます。

 

ただ、この取材には続きがあって、「ありますけど」で止まった返事が出てくるんです。

小園選手は2026年7月、ゾンビたばこをチームメイトに渡したとされる男性と同席する写真を週刊誌に報じられ、球団には関わっていないと説明してきたと伝えられていました。

記者から、写真だけで何も証拠がない中で言いたいこともあると思うが、と向けられたときの答えは「まあ、そうですね、ありますけど」。

その説明が届かなかった無念さはあるか、と重ねて聞かれたときも、返ってきたのは「まあ、はい。ありますけど。まあ、仕方ないかなというところですね」でした。

言いたいことは「ある」と答えながら、その中身は口にしていません。


「白か黒かと言えば白」

そもそも昨年の首位打者がなぜ戦力外に、と驚いた人も多いはず。

小園選手は報徳学園高校から2018年のドラフト1位で入団し、昨年はリーグでいちばん打率の高い打者に贈られる首位打者のタイトルを取りました。

今年3月には野球の世界大会WBCの日本代表にも選ばれた、カープの顔のひとりです。

ここまでの歩みを並べて、激動すぎる、と驚く人もいました。

話のはじまりは、2026年1月にさかのぼります。

  • 1月27日:カープの羽月隆太郎選手(当時)が、指定薬物エトミデート(通称ゾンビたばこ)を使った疑いで逮捕
  • 2月24日:球団が羽月元選手との契約を解除
  • 5月:羽月元選手に有罪判決
  • 7月:小園選手・矢野雅哉選手・田村俊介選手が、羽月元選手にゾンビたばこを渡したとされる男性と同席する写真を週刊誌が掲載
  • 7月30日:矢野選手と前川誠太選手が家宅捜索を受けたと球団が発表
  • 9月25日:矢野選手と前川選手が書類送検
  • 10月1日:4選手に戦力外通告

7月の写真と、同じ夏に発表された小園選手の離婚については、こちらにまとめました。

色鉛筆とパステルで描いた渡辺リサさんと小園海斗さんのイラスト
小園海斗と渡辺リサの離婚理由…言えないのと言わないは違う2026年8月31日の夕方、広島東洋カープの小園海斗選手と、モデルの渡辺リサさんが離婚を発表しました。 それぞれのインスタグラムに、ほと...

エトミデートは、海外では医療用の麻酔薬として使われている成分です。

これを含んだ液体を電子たばこで吸うものが「ゾンビたばこ」と呼ばれていて、日本では2025年5月に指定薬物になりました。

写真を報じられたのが小園選手・矢野選手・田村選手、家宅捜索を受けたのが矢野選手・前川選手で、合わせて4人です。

 

では、球団は小園選手たちを「黒」と判断したのでしょうか?

10月1日、取材に応じたカープの鈴木清明球団本部長の説明は、その逆でした。

エトミデートを使用したという事実は確認できていないと話し、規律違反なのかと聞かれても「違反とかそういうものではないです」と答えたうえで、「白か黒かと言えば白なんですよ」とまで言っています。

それでも契約を結ばない理由として挙げたのは、何か新しい問題が出たときに「この選手は大丈夫だ」と言えないことでした。

1月の逮捕から続けてきた調査は半年以上、選手によっては5、6回の聞き取りを重ねたものの、たずねても答えが明確でないところがあったと話していて、それが誰のどの答えなのかは明かしていません。

白だと言いながら、大丈夫だとは言い切れない。


戦力外通告はクビと何が違う

「戦力外」と聞くと、成績が悪くてクビになった、と受け取ってしまいますよね。

戦力外通告というのは、球団が選手に「来年の契約は結びません」と伝えることです。

伝えてよい期間は秋に2回あって、2026年は9月28日から10月9日までが1回目、そのあと10月30日までにもう1回。

通告を受けても契約はすぐには切れず、カープの鈴木本部長も「11月末までは契約期間だから」球団の施設は使えると話していました。

ゾンビたばこの件で2月に契約を解除された羽月元選手のように、契約の途中で終わりになるのが、いわゆるクビ。

今回は今年の契約を最後まで残したうえで、来年の分を結ばない形になっています。

 

謹慎のような処分ではだめだったのか、と感じた人もいました。

鈴木本部長の説明では、違反があればシーズン中に処分することもあり得たけれど、今回はそういう話ではなかったとのこと。

そのうえで、この時期に来年の契約を結ぶかどうかは「我々の権利」だと言い切っていました。

罰として切ったのではなく、更新しないことを選んだんですね。

 

通告を受けた選手は、どの球団とも自由に話ができる「自由契約」という立場です。

ほかの選手と交換するトレードという道もありましたが、球団は「我々の損失はあったとしても」自由契約にしたと説明しています。

昨年の首位打者を、見返りなしで手放したわけです。

クビとの違いを並べると、こうなります。

  • 契約:今年の分は11月末まで続く(クビは途中で打ち切り)
  • 理由:成績とは限らない(今回は信頼関係)
  • 行き先:自由契約なら、どの球団とも話せるかわりに自分で探す


同じ日に並んだ4人の言葉

小園選手の返事が目立ったのは、ほかの3人と並んだからでもあるんです。

この日は、通告を受けた4人がそれぞれ取材に応じました。

  • 矢野選手「僕の軽率な行動でファンの方々や球団関係者の方々に本当に多大なるご迷惑、ご心配をおかけした」
  • 前川選手「裏切ったような形になってしまい、本当に申し訳ない」
  • 田村選手「こんな馬鹿で不器用な自分を5年間育てていただいて本当に感謝の気持ちでいっぱい」
  • 小園選手「そうですね、はい。仕方ないかなと思います」

3人の言葉にはお詫びや感謝がはっきり入っていて、野球を続けたい気持ちも、それぞれが口にしたと報じられています。

その並びの中に「そうですね、はい」が入ると、どうしても一人だけ浮いて見えてしまう。

この投稿は小園選手について、次の契約を結んでもらって当たり前だと思っている、と続けています。

本人がそう思っているかどうかは、外からは確かめようがありません。

ただ、並べて聞いたときにそう受け取った人がいるのも事実です。

 

そして、4人が置かれていた状況は同じではありませんでした。

矢野選手は指定薬物を譲り受けた疑い、前川選手は持っていた疑いで、9月に書類送検(警察が調べた内容を検察へ送る手続き)されています。

田村選手は書類送検はされておらず、7月に週刊誌が載せた写真について「一緒にいたことは事実」と認め、「自分のゆるい気持ち」が招いたことだと話しました。

小園選手も書類送検はされておらず、球団には関わりを否定してきた立場です。

その写真について聞かれると、写っていること自体は否定せず、「写真写ってるんで。僕の口から言うことは何もないです」と答えていました。

何を詫びて、何を否定するのか。

短い返事の中で、小園選手はそこを言い分けていません。


夕方に本人が出した文章

会見の映像に怒りの声が広がっていた、10月1日の夕方のこと。

小園選手がInstagramに載せた長い文章を報道各社が伝えたのは16時台で、取材の内容が最初に報じられた13時台から、およそ3時間後でした。

出典:小園海斗(@kozocarp51)のInstagram(2026年10月1日の投稿)

そこには、会見では聞けなかった言葉が並んでいます。

  • 「多大なるご迷惑とご心配をおかけしたこと、心より深くお詫び申し上げます」
  • 「一部で取り沙汰されております違法薬物の使用や所持、あるいは反社会的勢力との繋がりといった法令違反行為につきましては、私自身、過去も現在も一切関与しておらず、いかなる違法行為の事実もございません」
  • 「疑念を抱かせるような交友関係や不用意な行動を取ってしまったこと自体が、自身のプロアスリートとしての自覚を著しく欠いていたのだと、その責任を痛感しております」
  • 「今後の活動につきましてはなにも決まっていませんが、私には野球しかありません」

詫びているのは疑いを持たれるような付き合いと不用意な行動で、否定しているのは違法薬物の使用や所持といった法令違反です。

会見では言い分けなかったことを、文章でははっきり書き分けていました。

 

映像が出たあと、ネットには「反省してます!でも、私はやってません!野球はやりたいです!って言えば良かったのに」という声も上がっています。

そのどれもが、数時間後の文章には入っていたんです。

なぜ会見で言わなかったのか。

正直なところ、それは本人にしか分かりません。

分かっているのは、あの会見が、球団から「信頼できない」と告げられたあとの囲み取材だったことだけです。

 

もちろん、あとから文章が出たからといって、映像の印象が消えるわけではありません。

文章が出たあとの17時台になっても、ネットにはこんな声が続いていました。

  • 「こいつ反省してない」
  • 「誠意がないし深刻さがわかってなさそう。」
  • 「まだ前川と田村がマシのファンへの言葉述べてるよな これはどこも拾わんわ」

会見の映像を最後まで見たという人は、もったいない、と書いています。

夕方の文章にあった言葉が囲み取材で出ていたら…と思ってしまいますよね。


小園海斗はこれからどうなる

このあと小園選手は、どこかでまた野球ができるのでしょうか。

会見の映像が広まった直後から、どこの球団も取らないのでは、という声は上がっていました。

自由契約になった選手は、声をかけてくれた球団があれば、どこでも契約を結ぶことができます。

ただ、カープの鈴木本部長は移籍について「サポートは特にない」「各球団の判断に任せればいい」と話していて、球団が次の行き先を世話する形にはならないようです。

過去に不祥事があった選手を承知で受け入れた球団もあった、野球は海外でもできる、とも付け加えていました。

戦力としては欲しい、けれど獲るべきではない。

他球団のファンからは、そんな声が上がっていました。

声がかからない場合は、例年11月に開かれる合同トライアウトで各球団にプレーを見せる道も残っています。

 

送り出す側のカープでは、新井貴浩監督が試合前に今回の通告について聞かれ、「子を持つ親として、彼らのことを考えるとすごく苦しくなります」と話したそうです。

ファンには「温かい目で今後、見守ってあげてほしい」とも呼びかけています。

小園選手自身の言葉は、会見の「できるんだったらやりたい」から、夕方の文章の「私には野球しかありません」へ変わりました。

会見での受け答えは、入団から応援してきた人たちへ向ける言葉としては足りなかったと感じてしまいます。

その足りなかった言葉を自分で書き足した小園選手が、もう一度ユニホームを着る日は来るのか、続報を待ちたいところですね。