「25代目ジュノンボーイに選ばれて」

番組の中で、そんなふうに名乗っていたそうです。

Netflixの『ラヴ上等』シーズン2に、2026年8月25日から二期メンバーが合流しました。

そのひとりが、ラッパーのルネ。

配信が始まってすぐ、この自己紹介のところで指が止まった、という人がいました。

というのも、その年のジュノンボーイは、まったく別の人だからなんです。

じゃあ嘘をついたのか。

そう言い切ってしまう前に、この話には引っかかるところが3つ。

しかも3つ目まで見ていくと、嘘という一語では収まらないことがわかってくるんです。

今回は、この『25代目』という肩書きの何が引っかかるのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。

ルネが名乗った25代目という肩書き

まずは、番組のほうから。

『ラヴ上等』は、Netflixで配信されている恋愛リアリティーショーです。

プロデュースはMEGUMI、MCはAwich。

シーズン2の舞台は沖縄で、「羅武上等マリーンアカデミー」という名前の合宿所に若い男女が集まって、ひと夏を一緒に暮らします。

参加しているのは、美容師、バーの経営者、見習いの彫り師、ホスト、キャバクラ勤めの女性たち。

ヤンキーカルチャーを真正面から出した番組で、シーズン2は配信が始まる前から賛否がにぎやかでした。

そこへ8月25日、エピソード11から二期メンバーが入ってきます。

ルネは、その二期メンバーのひとりです。

 

番組が公開しているプロフィールでは、肩書きは「ラッパー・塗装会社経営」。

キャッチコピーは「恋も勝負も、正々堂々」。

本名は勧修寺玲旺、アーティスト名はRUNE999、東京都江戸川区の出身で、今年28歳になります。

歌手の後藤真希の甥にあたる人、と紹介されることも多いようです。

顔にも首にもタトゥーが入っていて、昔の俳優時代を知っている人ほど画面を二度見した、という話も出ていました。

 

さて、問題の自己紹介です。

ネットでは、ルネが番組の中で「25代目ジュノンボーイに選ばれて」と話していた、という指摘が広がりました。

かなりの反応が集まっています。

ジュノンボーイという言葉は、いまの30代40代にはよく通じるものでした。

雑誌の表紙やドラマの新人枠で、その肩書きごと紹介されていた時期があったからです。

だからこそ、歴代の顔ぶれをなんとなく覚えている人ほど、あの一言で立ち止まったのだと思います。

 

ここは先にお断りしておくと、発言を伝えるニュース記事は、いまのところ出ていません。

番組を観ていた人が気づいて、そこから広がったという段階です。

ただ、指摘されている中身のほうは、その気になれば誰でも確かめられます。

そして確かめてみると、たしかに引っかかるところが出てくるんです。

25代目は仮面ライダーの主役だった

ジュノン・スーパーボーイ・コンテストが始まったのは1988年。

主催しているのは『JUNON』という雑誌を出している主婦と生活社で、2025年で第38回を数えました。

芸能界の登竜門として知られていて、ここから出てきた俳優は数え切れません。

ルネが出たのは、2012年の第25回。

では、その第25回のグランプリは誰だったのか。

 

犬飼貴丈です。

当時18歳、徳島県の高校3年生でした。

報道によれば、この回の応募総数は1万3816人。

その少年が5年後に、『仮面ライダービルド』の主役になります。

日曜の朝、子どもと一緒にあの変身シーンを観ていたご家庭も多かったのではないでしょうか。

準グランプリは上野凱、フォトジェニック賞は財木琢磨、審査員特別賞は横田龍儀。

名前を聞けば顔が浮かぶ、という人も多いはず。

そしてルネは、この回のファイナリストとして記録されています。

グランプリではなく、ファイナリスト。

公表されてきた経歴を並べても、そこはずっとファイナリストと書かれてきました。

25代目という椅子には、すでに別の人が座っているというわけです。

これが、引っかかるところの1つ目。

ファイナリストは毎年15人いる

ここで「じゃあ完全にアウトじゃないか」と言いたくなりますよね。

ところが、話はもう少しややこしいところがあります。

このコンテストのファイナリストは、敗者復活を入れて15人。

1万3816人が応募して、15人が最後のステージに残って、その中のひとりがグランプリを獲る。

ファイナリストというのは、1万人以上をくぐり抜けた末の15人のことです。

残っただけ、という言葉で片づけられる数字ではありません。

 

しかもこの15人は、コンテストが終わったあとそのまま芸能の世界へ進んでいくことが多いんです。

事務所がついて、雑誌に出て、ドラマや舞台の端役から始めていく。

だから世の中では、グランプリを獲った人だけでなく、ファイナリストまでを含めて「ジュノンボーイ」と呼ぶ使い方が、ごく普通に通っています。

このコンテストの説明にも、ファイナリスト以上の俳優が「ジュノンボーイ」と呼ばれることがある、と書かれているくらいです。

 

つまり、ジュノンボーイを名乗ること自体は、責められる話ではありません。

そこは先に押さえておきたいところ。

ネットの空気だけを追いかけていると、ここが飛ばされたまま「経歴詐称」の一語で片づけられてしまいます。

これが2つ目です。

うーん、ややこしい。

セーフとアウトを分ける2文字

ここまでで、ずいぶん妙なことになりました。

その年のグランプリは、別の人。

でも、ジュノンボーイという名乗り自体は通ってしまう。

では、いったい何が引っかかっているのか。

 

「代目」の2文字です。

ジュノンボーイは集団を指す言葉で、◯代目は椅子を指す言葉なんです。

ジュノンボーイという呼び名には幅があります。

グランプリも、準グランプリも、ファイナリストも入ってしまう、ゆるい入れ物です。

ところが「25代目」と数字をつけた瞬間、その椅子はひとつしか残りません。

25代目に座れるのは、グランプリを獲ったひとりだけだからです。

 

会社に置き換えてみると、たぶん一発でわかります。

創業何十年という会社に「3代目社長」がいるとして、同じ時期に役員だった人が自分を3代目と呼んだら、それはもう別の話になりますよね。

役員だったことは本当でも、3代目という言葉が指す席はひとつしかないからです。

履歴書の資格欄とも、どこか似ています。

二次試験まで進んだ、と書くぶんには誰も困りません。

ところが合格と書いた瞬間に、それは確かめられる話に変わります。

 

同じことが、この肩書きにも起きています。

ジュノンボーイまでは、38年ぶん積み重なってきた呼び名の幅が守ってくれる。

そこへ「代目」を足したとたん、幅が消えて、指す人がひとりに絞られてしまう。

盛ったかどうかの話ではなく、どこで別物になったかの話だと思います。

そして、その境目は肩書きの中ではなく、2文字の中にありました。

これが3つ目の引っかかりです。

 

わざとなのか、思い違いなのか、そこは外から見ているだけではわかりません。

番組の編集がどこをどう繋いだのかも、画面のこちら側からでは見えないところ。

ただ、呼び名の曖昧さを、たった2文字で踏み抜いてしまったことだけは、はっきりしています。

盛らなくても十分に濃い経歴だった

ここからは、ルネという人の経歴そのものを見ていきます。

公表されている生年月日から数えると、あの決勝のステージに立ったとき、ルネはまだ14歳でした。

中学生の年で、1万3816人のうちの15人に残っているということです。

大人に混ざって、あの舞台に立った14歳。

その一行だけで、もう十分に強いと思うのですが、どうでしょうか。

 

翌2013年には舞台『グリムの森』で俳優デビュー、2015年には『仮面ライダーゴースト』にナリタ役で出ています。

2017年に事務所との契約が終わり、2021年からRUNE999としてラップを始めました。

2024年には1枚目のアルバム『江戸川』を出しています。

育った土地の名前を、そのままアルバムのタイトルにする。

塗装会社の経営もしていて、いまは社長でもあります。

江戸川区で生まれて、江戸川という名前のアルバムを出して、その土地で職人の会社をやっている。

芸能の肩書きよりも、こちらのほうがよほど人の記憶に残るはずなんです。

 

そして、冒頭に書いたことをもう一度。

プロフィールに、ジュノンボーイの文字はありません。

書いてあるのは「ラッパー・塗装会社経営」の2つだけ。

仮面ライダーのことも、後藤真希のことも入っていません。

つまり番組の側は、肩書きなしでこの人を出せると判断していたわけです。

それなのに本人が足してしまったのだとしたら、なんとも惜しい。

キャッチコピーが「恋も勝負も、正々堂々」なだけに、よけいに惜しく見えてしまいます。

 

肩書きというのは不思議なもので、足せば足すほど本体が大きく見えそうなのに、実際は逆に働くことがあります。

その人が本当にやってきたことが、肩書きの後ろへ隠れる。

今回もまさにそうで、14歳でファイナリストという話より、25代目という2文字のほうが先に人の口にのぼりました。

『ラヴ上等』は、経歴のきれいさで勝負する番組ではないはずです。

むしろ、そこを取り払ったところから始まる番組だったように見えます。

 

番組はまだ配信の途中で、本人の言葉として何がどう語られたのかも、これから確かめられていくところです。

ただ、25代目という2文字を足さなくても、14歳で15人の中に残ったという話は十分に強い。

足したことでそこがかすんでしまったのだとしたら、なんだかもったいない話ですね。