2026年9月25日の午後4時半ごろ、東京湾岸署の前に、黒いスーツにネクタイを締めたtimeleszの猪俣周杜(いのまた・しゅうと)が姿を見せました。

「この度は大変申し訳ございませんでした」とひと言だけ口にして、22秒ほど深く頭を下げています。

9月19日に傷害の疑いで逮捕されてから、7日目の釈放でした。

釈放を伝えるニュースには、こんな言葉が並びました。

  • 処分保留
  • 示談の成立(とみられる)
  • 在宅での捜査

そんな法律用語のような言葉を見て、私の頭にまず浮かんだのは「まさか、このまま復帰なんてしないよね」という思い。

実際、CMを流していたスポンサー企業も、番組を作るテレビ局も、示談を待たずに先回りして手を打っていました。

いっぽうで、所属事務所の公式ショップ「ファミクラストア」のオンラインから猪俣周杜の写真が消えたと分かったのは、釈放から2日たった2026年9月27日の朝のことです。

その4日後の10月1日には、事務所が猪俣周杜と結んでいた契約そのものを打ち切っています。

勾留期限の4日前に釈放

事件が起きたのは、2026年9月18日の午後10時半ごろ。

東京・江東区辰巳(たつみ)のコンビニの駐車場に停めた車の中で、26歳の知人女性と口論になり、顔を何度も殴ってけがをさせた疑いがもたれています。

女性は鼻から血を流し、顔には痛々しいあざがあったと伝えられました。

翌19日に逮捕、20日に東京地検へ送られ、そのあと10日間の勾留が認められています。

 

勾留の期限は9月29日まで。

それより4日早い25日の夕方に、猪俣周杜は外へ出てきました。

起訴するかどうかの判断をいったん先へ送る「処分保留」での釈放で、この先は留置場ではなく家に帰ったまま、警視庁の調べが続きます。

勾留期限より早く出てこられた理由は、被害を受けた女性とのあいだで示談が成立したとみられること。

取り調べでは当初、容疑を否認していたものの、その後、認めたとも伝えられています。

示談は世間が許した印ではない

示談というのは、手を上げた加害者の側と被害を受けた側のあいだで交わす約束のことです。

頭を下げて謝ってお金を払い、被害を受けた人が「これ以上の処罰は求めません」と書面で伝える。

その約束があると検察は起訴を見送ることが多く、今回も1か月ほどのうちに起訴猶予になると、フジテレビの解説副委員長は見ています。

 

起訴猶予とは、罪を犯した疑いは十分にあるけれど、反省や示談といった事情をくんで裁判にはかけない、という判断のこと。

起訴猶予は無罪放免ではなく「不起訴」の一種なので、ニュースではたいてい「不起訴」とだけ伝えられます。

その3文字だけが独り歩きすると、何もなかったかのように聞こえてしまうのです。

 

しかも示談は、あくまで当事者どうしの約束。

そこにファンは入っていないし、CMを流していた会社も、同じグループのメンバーも入っていません。

被害を受けた女性がどんな思いで約束に応じたのかも、外からは見えないまま。

だから、被害を受けた人が処罰を求めないことと、世の中がその人をもう一度舞台へ迎えることは、はじめから別の話だと思います。

CM6社とテレビ局が先に出した答え

逮捕がテレビやネットで報じられた2026年9月19日から、スポンサー各社は次々に広告を下ろしていきました。

  • ABCマート=9月14日に公開したばかりの限定モデル「TEKWEN」のCMと広告画像を削除
  • 日清食品「チキンラーメン」=同じtimeleszの橋本将生・篠塚大輝と出ていた広告を取り下げ
  • 発酵美容サプリ「ByGLOW」=初めての単独アンバサダーの写真を削除
  • AOKI=「フォーマルスーツ」のCM出演ページを削除
  • CHARGESPOT(チャージスポット)=20日に広告を削除
  • Google「Google Pixel」=21日までに関連の画像と動画を削除

逮捕からたった3日のうちに、6社の広告がそろって姿を消しています。

 

テレビ局の動きも同じ。

  • 日本テレビ「timeleszファミリア」=猪俣周杜の映る場面を削って放送
  • テレビ朝日「ニカゲーム」=単独で出ていた番組を休止
  • フジテレビ「タイムレスマン」=釈放と同じ9月25日の社長会見で、この先も出演シーンをカットする方針

釈放されても、局の答えは変わらないまま。

 

過去には2018年にTOKIOを脱退した山口達也のとき、CMの放送中止や契約の見直しが重なり、違約金は約5億円にのぼる可能性があると報じられました。

今回についても、timelesz全員で撮る予定だった新しいCMがキャンセルになれば、それだけで違約金は4000万円にのぼる可能性がある、とスポーツニッポンが伝えています。

すでに下ろされたCMまで合わせれば、違約金は数億円規模になってもおかしくない、と話す芸能記者もいます。

示談が済んでも、不起訴になっても、一度下ろしたCMを、女性を殴った疑いで逮捕された人の顔でもう一度流す会社は、まず出てこないでしょう。

STARTOが示談で決められない事情

所属事務所のSTARTO ENTERTAINMENTは、釈放を受けて「事態の推移を見守り、猪俣の処分を決定して公表させていただきます」とコメントしました。

逮捕の直後にも「当局の処分が確定し次第」正式な処分を決めるとしていて、釈放の時点ではまだ当面の謹慎と活動休止のままでした。

STARTOは、旧ジャニーズ事務所の性加害問題を受けて2023年に動き出した会社で、設立のときからコンプライアンスの責任者を置き、弁護士や臨床心理士を講師に招いて、人権やハラスメントの研修をタレントにも定期的に受けさせてきたと報じられています。

タレントが人にけがをさせた傷害の疑いで逮捕されたとなると、歴史の長い旧ジャニーズの時代まで含めても初めてとみられているのです。

 

しかも本人は、18,922件の応募があった配信番組のオーディション「timelesz project」で、事務所がみずから一般から選んだメンバーです。

同じ事務所では、Aぇ! groupの草間リチャード敬太(リチャ)が2025年10月に公然わいせつの疑いで逮捕され、翌月にグループを抜けています。

ここで「示談が済んだから」「不起訴だったから」と戻せば、被害を受けた女性より、自分のところのタレントを先に守ったことになってしまいます。

それでも2026年9月26日には、東京スポーツが「残留説」を伝えました。

グループを引っぱってきた菊池風磨が事務所と話し合えば、猪俣周杜を残す道もなくはない、という業界関係者の見方。

示談で片がつけば戻ってこられる、という話にも聞こえてしまいます。

ファミクラストアから消えた猪俣周杜の写真

その翌朝の2026年9月27日、ファミクラストアのオンラインショップを開いたファンが、timeleszのページに並ぶメンバーの名前から猪俣周杜が外れているのに気づきました。

「もちろん写真も周杜が写ってるのは1枚もない」「8人の集合写真も…」という声も上がっています。

逮捕のあとも、猪俣周杜の写真は店頭でもオンラインでもしばらく買えるまま。

同じ事務所の草間リチャード敬太が逮捕されたときはすぐに消えた、と覚えていた人からは、逮捕の翌日にこんな声も出ています。

釈放された9月25日の夕方にも、オンラインで「普通に買える」と驚く声がありました。

 

ファンのあいだでは「退所の前ぶれでは」と受け止める声も上がっていますが、STARTOは写真を下ろした理由を何も説明していません。

CMの顔は逮捕から数日で下ろされたのに、自分のところの店が写真を下ろしたのは釈放のあとだったことになります。

釈放から5日で切られた専属契約

「退所の前ぶれでは」という声は、4日後に本当になりました。

2026年10月1日の朝、STARTOの公式サイトに出たのは、9月30日付で専属契約を解いたという知らせでした。

決めたのは9月29日の取締役会で、理由は「専属契約上の重大な違反」。

刑事の処分はまだ決まっておらず、今回の解除は刑事処分とは別に、契約にもとづいて判断したものだと書かれていました。

逮捕の直後に約束した「当局の処分が確定し次第」を待たず、示談が済んだかどうかにも寄りかからない答えです。

 

同じ事務所の草間リチャード敬太は、2025年10月の逮捕から47日後にグループを抜けましたが、事務所との契約は続いていました。

猪俣周杜は、逮捕から12日後の発表で、契約ごと切られています。

示談で片がつけば戻れる、という残留説の道は、ここでなくなりました。

 

グループは残る7人で続いていきます。

発表文には、メンバーについてこんな一文もありました。

「今回の契約解除は、会社としての経営判断となり、その最終判断は他のメンバー7名に委ねたものではなく、かつメンバーに処分の責任を負わせるものではありません」

この一文と「重大な違反」という言葉に、すっきりしない思いを書き込んだ人もいます。

「当然」の次に出てきた7人への心配

契約解除の知らせに、まず返ってきたのは「当然の判断」「常識的な処分で安心した」という言葉でした。

人にけがをさせて警察沙汰になれば、ふつうの会社に勤める人でも同じ職場にはいられないはず。

「遅くはなりましたが、ひとまず安心しました」と、待たされた12日間ごと受け止めた人もいました。

 

ただ、ほっとした気持ちのすぐあとに出てきたのは、残された7人のことです。

これから先、まったく関係のない番組の制作発表でも、報道陣の前で頭を下げるのは7人のほう。

年末のカウントダウンコンサートに出れば荒れてしまうから、今年は無理に出ないでほしい、と先回りした心配まで出ています。

「これからは7人で頑張ります」とあいさつして、何もなかったように仕事が続いていくのか、と冷めた目で見ている人もいました。

 

なかには、7人の姿を見るのがつらくて、猪俣周杜と一緒にtimeleszから離れると決めたファンもいます。

「今まで楽しませてくれて、ありがとう」という言葉を添えて。

18,922件の応募から勝ち取った夢だったのに、と惜しむ声も消えていません。

そして同じ朝には、被害を受けた人に、誠意のある対応をしてほしいという言葉も書き込まれています。

契約が切れても、謝らなければいけない相手がいることは何も変わりません。

22秒のお辞儀と「手が当たった」

湾岸署の前で22秒のお辞儀を終えると、猪俣周杜は報道陣の問いかけに答えないまま車へ乗り込んでいます。

逮捕された直後、猪俣周杜は「口論になってパニックになった」「手が当たってしまったかもしれません」と話していたと伝えられていますが、顔にあざが残るほどのけがを「手が当たった」で片づけるのは、さすがに無理がありますよね。

そもそもあの22秒の謝罪は、けがをした女性に向けたものだったのか、仕事で迷惑をかけた人たちに向けたものだったのか。

謝った相手も、謝った中身も、本人は人前でまだ一度も口にしていません。

 

本人がまだ言えていない、けがをした女性への言葉を人前で口にしたのは、同じtimeleszの篠塚大輝でした。

2026年9月26日、自分がパーソナリティーを務めるTBSラジオの番組の冒頭で、メンバーの逮捕を謝ったあとにこう続けています。

「何より今回の件で被害に遭われた方のことを大変心配しております。被害に遭われた方が一日でも早く安心して過ごせる日常を取り戻されることを心より願っております」

「メイクしてる?」と言われた釈放の姿

ニュースで流れた釈放の映像で、まず画面越しに目に入ったのは顔でした。

逮捕前は明るい茶色だった髪が黒く染め直され、目元もくっきり整っていて、「メイクしてる?」という声がすぐに上がっています。

思い出したのは、草間リチャード敬太が釈放されたときの姿です。

リチャはカメラの前で泣きながら頭を下げていました。

その姿と並べると、整った髪と顔は、反省より先に人前に出る準備をしてきたように見えます。

見た目を整えたのが本人か周りかは分かりませんが、あの姿で頭を下げられても、気持ちまでは伝わってきません。

「前向け!」の励ましとけがをした女性

釈放のニュースには、励ましの言葉も集まりました。

ネット上には「これからだよ!頑張ろう!諦めんな!前向け!」「しばらくおとなしく謹慎して戻ってほしい」といったコメントが並んでいます。

これまでお金や時間をかけてずっと応援してきた人がショックを受けているのは、きっと本当なのでしょう。

 

ただ、その「前向け!」を、顔にけがをした女性が目にしたらどう感じるか。

顔も名前も出せない女性は、自分から名乗り出ることも、言い返すこともできません。

逮捕のあとには、ネット上でかばう側から署名を呼びかける動きや、「女性が自分で顔を殴った」といった心ない書き込みまで出回りました。

逮捕の直後から、事件のあったコンビニが「聖地」と呼ばれて、ファンが足を運んでいるという話まで出ています。

こうした書き込みや振る舞いがひとつでも目に入れば、被害を受けた女性はもう一度傷つくことになります。

契約解除の発表文も、最後は「被害にあわれた方への過度な取材および誹謗中傷等はお控えいただきますよう」というお願いで結ばれていました。

示談で片がついたのは本人と女性のあいだのことだけで、世の中の側は、まだ何も許していませんよね。