2026年9月19日、timeleszの猪俣周杜(いのまた・しゅうと)が傷害の疑いで逮捕されました。

前の日の夜、東京・江東区辰巳(たつみ)のコンビニ。

その駐車場に停めていた車の中で、知人である26歳の女性の顔を殴ったとされています。

鼻から血を流したまま店へ駆け込んで助けを求めた女性を見て、居合わせた一般客が110番通報したと報じられました。

所属事務所が当面の謹慎と活動休止を慌ただしく発表し、翌20日、猪俣周杜は東京地検へ送検されています。

その送検を伝える続報で新しく出てきたのが、拳で顔を複数回殴っていたという捜査関係者の話でした。

そして逮捕から3日目の21日になっても、署から出てくる姿はありません。

22日の朝、認められたのは10日間の勾留だと報じられています。

その後、9月25日に釈放されたものの、10月1日には事務所との契約が打ち切られ、グループからも外れています。

 

そしてSNSでは「だから一般人をいきなり入れるなと言ったんだ」という批判の声がいっせいに出ましたが、これはオーディションのタイプロ(timelesz project)が始まった頃から一部でずっと言われていて、そのたびに時代遅れだと笑われてきた言い分でした。

ただ、そのタイプロのとき新加入に反対していたファンが本当に心配していたのは、目に見える歌やダンスが素人だということではなかったはずなんですよね。

逮捕された猪俣周杜がどこから来た人で、18,922件もの応募からどうやって残り、グループ加入からたった10か月でドームの舞台に立ったのか。

コンビニの駐車場で何があったのか

逮捕の容疑になっているのは、2026年9月18日の午後10時30分ごろの出来事です。

報道によると、車の中で26歳の知人女性と口論になり、相手の顔を殴ってけがをさせた疑いがもたれています。

20日になって捜査関係者の話として伝えられたのが、拳で女性の顔面を複数回殴り、鼻などにけがをさせていたという新しい中身でした。

店に駆け込んだ女性が口にしたのは「警察官を呼んで」という言葉だったと伝えられています。

現場のコンビニは倉庫街の一角にあって、周りに住宅もありません。

 

取り調べに対して猪俣周杜は容疑を否認していて、警視庁へ伝えているのは「口論になってパニックになった」「手が当たった」という趣旨の説明。

同じ夜の同じ出来事を話しているとは思えないほど、二つの言い分は食い違ったままです。

どちらが本当なのかは、捜査の段階ではまだ分かっていません。

 

事件のあった18日の夜、猪俣周杜は同じ新メンバーの原嘉孝(はら・よしたか)と仕事をしたあと、インスタグラムのストーリーズを更新していました。

「原くんと仕事してきたよ」というメッセージを添えて、ピースをしながら自撮りした動画。

コンビニの駐車場での出来事は、その数時間後になります。

 

所属事務所のSTARTO ENTERTAINMENTが公式に動いたのは、逮捕が報じられた当日。

本日、弊社契約タレントの猪俣周杜が逮捕されたことをご報告いたします。被害を受けた方に対しては、心より深くお詫び申し上げます

弊社としては、事態の重大性を深刻に受け止め、当面の間、猪俣を謹慎とし、活動を休止させていただくことといたします。当局の処分が確定し次第、猪俣の処分を正式に決定し公表いたします

そして2026年9月20日の朝、猪俣周杜は東京・台場の東京湾岸警察署から東京地検へ送検されました。

署の前にはおよそ30人の報道陣が集まり、移送の車の中でマスクをしてうつむく姿が写真に撮られています。

認められた10日間の勾留

地検へ運ばれたのは午前9時ごろで、銀色のワンボックスカーに乗せられての移動。

そのまま起訴されるでも帰されるでもなく、夕方近くには東京湾岸警察署へ戻ってきました。

その日のうちに勾留が決まったと伝えられ、そして2026年9月22日の朝、スポーツニッポンがこう報じます。

10日間の勾留請求が認められた。

 

勾留というのは、逮捕したあとも身柄を留め置いたまま調べを続ける手続きのことで、期間は原則10日、裁判官が必要と認めればそこからさらに最長10日まで延びるものです。

いちばん長い場合で20日間、家には帰れません。

傷害の疑いでも、自宅から通って調べを受けている人はいます。

そのなかで身柄を置いたままにする、という判断でした。

 

逮捕が報じられた19日、湾岸署の前には「今日中に帰されるのでは」と見た報道陣が詰めかけています。

送検された20日の早朝にも、30人以上。

けれど誰ひとり、署から出てくる姿を撮れていません。

 

けがが軽くて済んだ傷害の事件なら、逮捕の当日や翌日に帰される例も多いのだそう。

スポーツニッポンはこの3日間を「異例」と書きました。

 

言い分が食い違ったままの相手と、自由に連絡の取れる状態にはしておけない。

捜査する側がそう考えたのだとしたら、まずはこの10日がそのための時間ということなのでしょう。

起訴するかどうかの判断も、そのあいだに出ます。

女性への暴行は勾留されやすい

異例と書かれていたのは、3日たっても身柄が置かれたままという、その長さのことでした。

勾留と決まったこと自体は、手続きとして見ていくともう少し事務的な話です。

法務省の統計では、逮捕されて検察へ送られた人の9割以上について検察官が勾留を請求していて、2024年にその請求が裁判官に認められたのは95.7パーセント。

断られるのは20件に1件もありません。

逮捕までいった時点で、そのまま20日間置かれる道はほぼ開いているので、勾留が決まったこと自体は特別に重く見られた印というわけでもないんですね。

 

本当の分かれ目は、そのあと身柄がいつ解けるか。

長引いている理由として考えられることを、元大阪地検検事の亀井正貴(かめい・まさき)弁護士がスポーツニッポンに3つ挙げていました。

  • 本人が容疑を否認していること
  • DVがあったかどうかの捜査
  • 被害を受けた人の側が刑事罰を望んでいる場合

二つ目のDVというのは、二人が交際していた場合を想定した調べのこと。

三つとも、行き着く先は同じところです。

効いてくるのは、相手が誰だったかということ。

知らない人どうしの喧嘩なら、外に出ても相手には近づけません。

ところが相手が交際していた人だと、連絡先も住んでいる場所も分かっています。

あのときのことは言わないでほしい、と頼みに行ける距離に、被害を受けた人がいる。

だから交際相手や知人の女性への暴行は、身柄を置いたままにする理由がそろいやすいと言われます。

話を合わせにいく心配があり、帰した先で同じことが起きる心配もある。

亀井弁護士は、こんな言い方をしていました。

釈放後に再び暴力を振るったり口止めする可能性も否定できない。被害者の安全が確保できる状況でない限り、男女間の傷害事件でこのような判断が通例になりつつある

弁護士以外とは面会も手紙もできなくなる接見禁止が付くことも、この種の事件ではよくあります。

 

早く外に出られるのは、たいてい被害を受けた人と話がついたときです。

ところが本人が「手が当たった」と言っているうちは、謝りに行く土台そのものが立ちません。

反省していないから留置されるのだ、という見方がSNSで広がっています。

ただ実際の手続きは、反省の色より先に、被害を受けた人との距離を見ているんですよね。

 

その手続きそのものへ、疑問を投げた弁護士もいます。

否認したら身柄を置く、が当たり前になっていないか、という問いかけ。

身柄が解けないまま続く日数は、やったことの重さとは別のものさしで決まっていきます。

その後、猪俣周杜は2026年9月25日に処分保留で釈放されました。

示談が成立したとみられる釈放のあとも、復帰に反対する声がやまない理由は、猪俣周杜復帰に反対の声…示談と釈放では許されない業界事情にまとめています。

傷害なのに活動休止だけなのか

事務所が19日の夜に出したのは、当面の謹慎と活動休止までです。

正式な処分は「当局の処分が確定し次第」決めて公表する、という書き方になっていました。

この「当局の処分が確定し次第」が、どうしても飲み込めない。

同じところで引っかかった人が、ほかにもいました。

いっぽうで、発表文をそのまま読めばこうなる、という声も出ています。

本人が否認したままのこの段階で、事務所が正式な処分を決めるための材料は、たしかにどこにも揃っていないわけです。

ただ、もやもやするのは手続きの話ではないんですよね。

 

鼻から血を流して助けを求めた人がいて、返ってきた言葉が「当面の謹慎」。この二つが、どうしても釣り合って見えない。

しかもSTARTO ENTERTAINMENTにとって、傷害の疑いでの逮捕は旧ジャニーズ事務所の時代まで含めて初めてとみられるとスポーツ紙が報じました。

前例がないぶん、どんな処分になるのか見当もつかないまま、日にちだけが過ぎていきました。

答えが出たのは、逮捕から12日後の2026年10月1日です。

9月30日付で専属契約を解くという発表で、STARTOが挙げた理由は「専属契約上の重大な違反」でした。

刑事の処分はまだ決まっておらず、最初の「当局の処分が確定し次第」を待たないまま、契約にもとづいて出した答えでした。

猪俣周杜のプロフィールと経歴

timeleszは、もともとSexy Zoneという名前で親しまれていたグループ。

そこへ外から加わったのが猪俣周杜です。

  • 名前=猪俣周杜(いのまた・しゅうと)
  • 生年月日=2001年8月17日(25歳)
  • 出身=茨城県
  • 血液型=AB型
  • 身長=172cm
  • 所属=STARTO ENTERTAINMENT/timelesz(メンバーカラーは黄色)
  • 加入=2025年2月15日、オーディション「timelesz project」を経て
  • 前職=父が経営する塗装会社の事務

オーディションを経て2025年に加入したときは23歳で、もとの3人に新メンバー5人が加わった8人の中では若いほうでした。

  • 2022年11月 アイドルグループ「8iper」に加入
  • 2024年5月1日 timelesz project の応募受付が始まる
  • 2024年5月2日 8iperの脱退を発表(月末で卒業)
  • 2024年9月13日 Netflixで「timelesz project -AUDITION-」の配信が始まる
  • 2025年2月15日 最終回で新メンバー5人の1人に決まる
  • 2025年12月26日・27日 京セラドーム大阪で新体制初のドーム公演
  • 2026年1月7日・8日 東京ドーム(2月4日・5日に追加公演)
  • 2026年9月19日 傷害の疑いで逮捕

新メンバー5人のうち、寺西拓人(てらにし・たくと)と原嘉孝(はら・よしたか)はもともと事務所に所属して長く舞台に立っていた人たちで、事務所の外から完全な新顔として入ったのは、橋本将生(はしもと・まさき)・猪俣周杜・篠塚大輝(しのづか・たいき)の3人。

古参のファンから「一般人」と懐疑的に呼ばれたのは、まさにこの3人でした。

地下アイドルをやめて入った父の会社

経歴の上で「一般人」と呼ばれてきましたが、猪俣周杜には人前でステージに立った確かな経験があります。

2022年11月に8iperという地下アイドルグループへ加わったときの名義は、いまと一字ちがいの「猪戸周杜(ししど・しゅうと)」で、目立つメンバーカラーは赤、活動期間はおよそ1年7か月でした。

アイドルの仕事がない平日は父親が経営する地元の塗装会社で働いていて、現場での塗装そのものは未経験、机に向かって担当していたのは経理と事務です。

将来が見えなかったその頃のことを、本人は逮捕前の取材でこう話しています。

大きな目標や夢が見いだせず、一生懸命になれない自分がいた

進路に迷うそんな22歳の目に、2024年3月31日のSexy Zoneの配信ラストライブの熱狂が飛び込んできました。

「言葉に表せないくらい心にグッとくるものがあって」と本人は振り返っています。

オーディションに応募したきっかけは、この夜でした。

 

翌4月1日にグループ名はtimeleszへ変わり、5月1日から公式に新メンバーの一般募集が始まります。

8iperの脱退が公式に発表されたのは、募集開始の直後のその5月2日。

過去の地下アイドルをやめる手続きと、メジャーでもう一度アイドルになる挑戦の募集開始が、奇しくも1日違いで重なっているのです。

応募書類を5通送った過去

タイプロの応募は2024年5月1日から6月2日までの1か月ちょっとで、届いた応募は18,922件ありました。

合格への執念からか、猪俣周杜は自分ひとりで応募書類を異例の5通も送っているのです。

本人いわく、人生を賭けていたし、何万人も応募があるだろうから、少しでも審査員の目に入るようにと必死に考えたのだとか。

審査側にいたtimeleszの菊池風磨(きくち・ふうま)は最初これを目立つための作戦かと思ったそうですが、実際に接してみた人懐っこい印象から「天然だからじゃないかな」と笑って言っています。

配信当時のタイプロでは、こういう脱線をファンが笑って受け止めて、不器用な必死さがそのまま熱い応援に変わっていきました。

書類の1次審査を通ったのは約350人で、そこから2次・3次・4次と容赦なく絞られて、5次の過酷な共同生活まで残ったのがわずか8人。

その8人で最終審査に臨み、猪俣を含む5人が晴れて合格します。

13位から上がった最終審査

猪俣周杜の評価は途中まで低いほうで、3次審査を通った15人の中では、下から3番目の13位でした。

そこから脱落者の出る合宿を勝ち残って残り12人に入り、その12人の中では8位まで一気に順位を上げたのです。

12人がさらに絞られて、最後の共同生活に残ったのが8人でした。

候補生どうしの投票では「努力がハンパないと思った候補生」で1位を取っています。

周りがノイローゼになるほど練習する、と寝食を共にした候補生仲間から一目置かれていました。

最終回で合格を告げるとき、迎えるtimeleszの3人がひとりずつ口にしたのが、こんな言葉。

  • 菊池風磨=「努力を見せずに、自分とただひたすら向き合って」
  • 佐藤勝利(さとう・しょうり)=「どんなに壁にぶつかっても自分の力で乗り越える姿、本当に頼もしかったです」
  • 松島聡(まつしま・そう)=「本当に誰からにも愛される」

歌やダンスより先に、人柄の言葉で送り出されたんですね。

最初から出ていた「一般人を入れるな」

タイプロが盛り上がっていた裏で、ずっと消えなかった声があります。

旧ジャニーズ事務所の伝統のやり方は、厳しいジュニアとして何年も裏方の下積みをして、ファンに育てられたあとにデビューするのが当たり前でした。

血の滲むようなその順番を飛ばして事務所の外からポッと人を入れることに、感情として納得できないファンは最初から少なくありません。

 

外から入ってきた人を「一般人」と冷ややかに呼んで、事務所のメンバーと並んで映ることさえ受け入れられない、という声が出た時期もあったほど。

今回の傷害容疑での逮捕が報じられたあと、懸念していたその批判の声はいっせいにSNSへ戻ってきました。

ネットのこういう厳しい声には、いま「そんなの偏見でしょ」という反論の返しがついています。

 

ただ、あのオーディションのとき反対していたファンは、単に外の素人を見下していたから意地悪で反対していたわけではありません。

デビューまでの下積みの何年かにこそ意味があると信じていたから、それを飛ばす危うさがただ怖かったのでしょう。

ファンが本当に心配していたのは、一躍有名になったあとの生活のことです。

デビューまで15年かかったメンバー

猪俣周杜の10か月が短いのかどうかは、先にデビューした人たちと並べてみるとよく分かります。

2020年にデビューしたSnow Man(スノーマン)の9人が、それまでジュニアでいた期間はこうでした。

  • 深澤辰哉 15年5か月
  • 阿部亮平 15年5か月
  • 渡辺翔太 14年6か月
  • 佐久間大介 14年3か月
  • 宮舘涼太 14年3か月
  • 岩本照 13年3か月
  • 向井康二 13年3か月
  • 目黒蓮 9年2か月
  • ラウール 4年8か月

いちばん短いラウールの4年8か月から長い人の15年まで、この年月のなかで何を身につけていたかというと、もちろん舞台での歌もダンスもありますが、技術の習得だけなら10年もかからないでしょう。

本当に時間がかかるのは、自分はもう普通の人ではないと体で分かることです。

 

深夜にふらっと近所のコンビニに寄っただけで、ネットに目撃情報が流れること。

街でプライベートの誰と歩いていたかが、翌日には週刊誌やSNSで文字になっていること。

ジュニアとして過ごす何年かは、歌とダンスを習う時間であると同時に、いつも見られている自分に慣れていく時間でもありました。

タイプロの応募の受付が始まってから最終合格が出るまでは、わずか9か月半。

けれど、審査員が才能を選ぶための時間と、本人が芸能界の重圧に慣れるための時間は、まったく別のものなんですよね。

「手を出すのはヤバい」と言っていた本人

体で分かるところまでは届いていなくても、言葉としてなら、本人はとっくに持っていました。

そう分かる映像が、逮捕のあとになって掘り出されています。

 

8iperにいた頃、視聴者から届いた悩みにメンバー7人で答えていく回があって、そこで読み上げられた相談のひとつがこれでした。

友だちが彼氏にDVされてて守ろうとしたら私も殴られた

画面のいちばん前に座って、じっと聞いていたのが、当時「猪戸周杜」と名乗っていた本人です。

そこで返した言葉が「手を出すのはまじヤバい」だったと、切り取った動画が21日の夜からXで回りはじめました。

3年ほど前の、まだ地下アイドルだった頃の映像。

 

その言葉を覚えていたファンにとっては、いま画面の前で言葉をなくすしかない映像でもありました。

知識として知っていたかどうかで言えば知っていたし、それを人に向かって言うこともできていたわけです。

 

だとすると、下積みの何年かが渡していたのは、知識よりもっと手前にあるものだということになります。

とっさの場面で、その言葉が自分にも向いてくるかどうか。

言えることと、できること。この二つのあいだを埋めるのに、あの十数年がかかっているのだと思います。

下積み15年の草間リチャード敬太も逮捕された

下積みを長くやれば不祥事が起きない、という話にはなりません。

2025年10月、人気グループAぇ! groupの草間リチャード敬太が公然わいせつの疑いで逮捕されました。

2009年2月に自分で履歴書を送って関西ジャニーズJr.に入り、苦節を経て悲願のCDデビューを果たしたのは2024年5月。

 

下積み時代だけで実に15年あって、これ以上ないくらい叩き上げの正規のルートを歩いた人でしたが、逮捕の翌月にはグループを脱退しています。

猪俣の事件が起きた今回も、その前例を指してSNSにこう書き込んでいる人がいました。

この指摘は過去の事実としてはそのとおりです。

ただ、「だから一般人かどうかは関係ない」で終わりにすると、あのとき反対していた人が見ていたものとは別の話になってしまいます。

あのときタイプロに反対していたファンが見ていたのは、プロとしての心構えを育てる時間の長さです。

 

15年の下積みをかけた人でも魔が差して間違えることはあります。

だからといって、心構えを叩き込むあの十数年の時間に意味がなかったことにはなりません。

15年見守ってもらってなお起きるくらい自制が難しいものを、一般から入った新人に1年足らずで身につけろというのは、どういうことなのか。

先に口を開いた浮所飛貴と真弓孟之

では、下積みの年月は具体的に何を渡していたのでしょう。

それが見えたのは、逮捕から2日後の生放送でした。

2026年9月21日の朝、日本テレビ「DayDay.」に出たのが、ジュニアの5人組ACEesの浮所飛貴(うきしょ・ひだか)です。

同じ事務所で活動する人として、この報道についてコメントを求められました。

僕自身も報道を聞いて知ったのですごく驚きました。まだ、わかっていないこともあると思うので、僕の口から何か申し上げることができないんですけども、まず被害に遭われた方がすごく心配ですし、1日でも早く心穏やかに過ごせる日が来るといいなとすごく思います

それと同時に、同じ事務所で活動する身として、改めて自分の行動に責任を持ってこれからの日々の活動に向き合っていきたいなと思いました

同じ日の昼、関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」でも、AmBitiousの真弓孟之(まゆみ・たけゆき)が同じように話を振られています。

びっくりしかなかったです。僕も皆さんと同じタイミングで知って、報じられている以上のことは知らないので何かを申し上げることはできないんですけど、被害者の方がいるということでそれも心配ですし、観られている方、ファンの皆さん同様にこれからどういう動きがあるのか気になります

分かっていないことには踏み込まない。

そのうえで、被害を受けた人のことを先に口にする。

台本のない生放送で、2人とも同じ順番で話しました。

 

そしてこの2人は、どちらもまだデビューしていません。

浮所飛貴が事務所に入ったのは2016年4月9日、中学3年生のときです。

あれから10年。

真弓孟之が入ったのは2018年2月で、こちらも8年が過ぎています。

 

いっぽうグループとして最初に文章が出たのは、20日の深夜でした。

菊池風磨たち残る7人の連名で、ファンクラブのサイトに「大切なお知らせ」として載っています。

この度、メンバーの猪俣周杜が逮捕されたことを聞き、全員、あまりの衝撃に言葉を失っています

今回の件で被害を受けられた方がいらっしゃることを、大変心配しております。本当に申し訳ございません

言葉を失った、が先に来て、被害を受けた人の話がそのあとに来る。

この順番に引っかかったという声は、すぐに出ました。

7人のコメントは深夜に出た文章で、ジュニアの2人は生放送でその場で振られた言葉です。

置かれた条件はまるきり違います。

それでも、先に被害者の話をしたのは、まだデビューしていない2人。

 

デビュー前のジュニアに地上波でコメントさせるなんて酷だ、という声もありました。

ただ、その酷な場面で言葉の順番を間違えなかったこと自体が、10年と8年ぶんの答えなのだと思います。

ステージに立つ順番はまだ回ってきていないのに、言葉の順番だけは先に身についている。

とっさに口から出るその順番は、何年もその場にいるあいだに、いつのまにか身につくもの。

タイプロで迎え入れた5人のうち3人に、その何年かはありません。

7人がそれぞれのブログで謝った

言葉の順番が話題になった、その日の夜でした。

2026年9月21日の23時ごろ、残る7人がそれぞれのブログを一斉に更新しています。

ファンクラブの会員だけが読める、有料のページです。

 

ENCOUNTが抜粋して伝えた中から、いくつか並べます。

  • 佐藤勝利=「何よりも被害に遭われた方のことがとても心配です」
  • 松島聡=「被害を受けられた方のことを思うと、胸が締めつけられる思いです」
  • 菊池風磨=「非常に残念で不甲斐なく、慙愧に堪えません」
  • 寺西拓人=「皆様の信頼なくして、私達の活動は成り立ちません」
  • 篠塚大輝=「僕自身、まだ整理がついていない状況です」

連名の一枚では届かなかったものを、ひとりずつの言葉で置き直した形。

読んで泣いた、という人もいました。

いっぽうで、七つのブログを並べて読んだ人からは、文面がどれも似ているという声も上がっています。

同じ日の朝に浮所飛貴が話した順番と、形がそろっている、と。

 

そして、この指摘がありました。

生放送で話を振られたのは、グループの外にいる後輩たちです。

まだデビューもしていない2人が、地上波で先に被害者のことを口にした。

そのことへのお礼も、お詫びも、報じられた抜粋の中には見当たりません。

 

有料のページで謝る順番は、たしかに七人それぞれが選んだものでした。

ただ、いちばん早く、いちばん無防備な場所で口を開いたのは、この件とまるきり関係のない2人だったわけです。

加入10か月で立ったドームの舞台

猪俣周杜が新メンバーに決まったのが2025年2月15日で、そこから目まぐるしい10か月あまりで12月26日と27日の京セラドーム大阪の巨大なステージに立ちました。

年が明けて1月7日と8日、さらに2月4日と5日の東京ドーム。

この6公演でグループを見に来た人は、およそ31万人。

 

ドーム公演が発表されたときには、こんな声も上がっています。

報道によると、逮捕の時点で個人として持っていた仕事はテレビのレギュラー番組が4本とCMが7社分で、地上波ドラマにも出て、配信ドラマでは記念すべき初主演も決まっていました。

新人としてここまで上り詰めて来ていた人が、華やかなスポットライトの裏で何を感じていたのか。

  • 歌もダンスもお芝居も僕は何かをできるようになるのに、何でも時間がかかる。焦りや足りなさを毎日感じている
  • オーディションに受かるために、捨てたものもたくさんある
  • 風邪もひけないし、次の日顔がむくんだらと考えると、何でも好きな物を食べることはできない

当時のスポーツ紙の取材では、短い受け答えのあいだに「悔しい」という言葉が8回も出たそうです。

いっぽうで、テレビの現場で関わった番組関係者はこう話しています。

愛想はいいが、仕事中の意識が散漫。少し前の話を忘れてしまうこともあった

またグループの冠番組のスタッフは、「暴力やケンカをするイメージもまったくありません」とも言っていました。

本人の気持ちが追いつく前に、立つ舞台と引き受ける仕事だけが、どんどん大きくなっていった。

CMも番組も一日で止まった

そして、その仕事のほとんどが、逮捕の報じられたその日のうちに止まりました。

CMは7社ありましたが、報道で19日のうちに動きが確認できたのは4社です。

  • 発酵美容サプリ「ByGLOW」=公式サイトから写真を削除(自身初の単独広告)
  • ABCマート=新しいCMを非公開に
  • 日清食品「チキンラーメン」=公式サイトの画像とXのCM動画が19日夕方から見られない
  • 紳士服のAOKI=出演していたページを削除

そして21日には、モバイルバッテリーのチャージスポットやGoogleも加わります。

スポーツニッポンが削除を確認したのは6社で、その並びを「全滅」と呼びました。

テレビも同じように動いています。

20日に放送された日本テレビ「timeleszファミリア」は、冒頭に「内容を変更してお送りします」とテロップが出て、猪俣周杜の映る場面が削られました。

スタジオの映像も、この人が画面に入らない角度が選ばれています。

同じ日の午前に流れたTOKYO FM「菊池風磨 hoursz」は、最初のナレーションで「今日の番組は、8月下旬に収録したものです」と断りを入れました。

そして21日、日本テレビが23日放送の「1億2000万人のありがとう 歌の感謝祭」について、timeleszの「出演部分については、一部を変更して放送する予定」と発表しています。

番組の出演者欄に、グループの名前は残ったままです。

 

身柄を置かれたままの人がいるグループが、勾留の決まった3日後に、感謝を歌う番組のステージへ立つ。

この並びには、やっぱり引っかかります。

単独のレギュラーだったテレビ朝日の「ニカゲーム」と、グループの冠番組であるフジテレビの「タイムレスマン」は、どちらも対応を検討中という回答のままです。

 

1年7か月かけて増やしてきた出演が、半日ほどで消えました。

週刊誌の報道では、相当額の違約金が発生する恐れまで指摘されています。

この速さに、こんな願いも出ていました。

かばう言葉が出てくるのも、この1年7か月を近くで見てきた人たちだからなんですよね。

もらった仕事の上に立っていた人は、その仕事が引かれるのも早い。

菊池風磨が自分で言っていた選ぶ重さ

いま、矛先のひとつは「選んだ3人」に向いていますが、タイプロを言い出したのは菊池風磨・佐藤勝利・松島聡の3人で、審査員まで自分たちで務めました。

だから現役メンバーの3人にも任命の責任がある、というファンの厳しい言い分には筋が通ります。

いっぽうで、本人の私生活まで連帯責任を負わせるのか、任命責任という考え方が気持ち悪い、という擁護の声も出ました。

 

人の人生を左右する側に立った菊池風磨は、他人を選ぶことの重さを、オーディションの当時から自分の口で言っています。

合格発表の直前だった2025年1月、木村拓哉のラジオ番組に出たときの言葉。

結構真面目なこととかを僕らが言うたびに、僕らはとんでもないブーメランを投げてるな、と思って

候補生が過去にほかのオーディションを受けていたことで賛否が起きたときには、こうも言っています。

そんなこと本人にしかわからないでしょってこと!それを厳正に審査するのが一番近くで見ている我々の役目だよってこと!

逮捕されたいま振り返って読むとあまりに重い言葉ですが、決して責任から逃げていた人の口ぶりではないんですよね。

審査員として外から人を迎え入れた側が背負っていたものも、たしかに重かったはず。

 

ただ、限られた審査期間で3人が見極められたのは、歌やダンスの力と、合宿で見せたやりきる姿勢と、周囲から愛される人柄までです。

一夜にして有名になったあとの自分を私生活でどうコントロールするかは、当然ながら事前の審査の項目に入っていませんし、実際にその立場になってみないと本人にも分からないことなのでしょう。

急激にスターになってみたあとに、その環境にゆっくり慣れるための時間を、事務所も周囲も誰も用意していなかったのです。

報道は「彼氏」を「知人」と書いた

報道では「知人女性」と呼ばれていますが、深夜の店に助けを求めたとき、被害女性は「彼氏に殴られた」とも話していたと伝えられました。

ただ、助けを求めた人が口にしたのは「彼氏」で、報道では「知人」になる。

そこに、アイドルという仕事の危うさが出ていると思うんです。

 

アイドルが恋愛を隠すのが当たり前だった時代は、少しずつ終わりつつあります。

timeleszと同じ事務所でも、STARTOになってから結婚や熱愛交際の発表が何度も続きました。

アイドル業界がそれでも表向き成り立っているのは、恋愛を見せない前提でチケットもグッズも売ってきたからです。

公にするならいい、でも隠れて付き合うのは許せない。

アイドルの恋愛禁止という暗黙のルールがいまも消えないのは、そのためです。

ステージの上で無償の夢を見せてくれる人がいるというのは、実は信じられないくらい壊れやすいことなんですね。

相手に私生活があることは知っていて、それでもペンライトを振っているあいだだけは忘れていられる。

アイドルの側もそれを分かっていて、ファンの前で見せる顔を選んでいる。

アイドルの側が「人間なんだからそんなの知らない」と開き直って言い出した瞬間に、何十年も保たれてきたこの場所は一瞬で終わります。

何年も下積みをしながら、先輩が私生活を律して守っているところを近くで見て、守らなかった人がどうなるかも間近で見て、ようやく自分がスポットライトを浴びる番になる。

 

SNSで「やっぱりジャニーさんはすごかった」と、亡くなった創業者の名前を出す人がいま増えているのは、たぶん人をほめているからではありません。

あの十数年が渡していたのは、有名になった自分と折り合う力だった。

それを10年かけて待てる事務所が、いまはどこにも残っていないからなのかもしれませんね。