漫画『みいちゃんと山田さん』の作者・亜月ねねが、自分の身元探しが進んでいた掲示板に、自分から書き込みに行っていたらしい。

その書き込みから本人のものとされるインスタが割れ、2026年9月26日の夜には住所まで知られてしまったとされています。

27日から28日にかけては、まったく関係のない家を身代わりに差し出そうとしていたのではという疑いや、夫とされる人物の話まで出てきました。

そして29日には、弁護士を名乗って届いていた削除の依頼まで、本人が書いたのではと疑われ始めています。

ただ、ネットでよくある「特定」なら、ここまでの大騒ぎにはならなかったはずです。

インスタのリンク1本で、なぜ身元までたどれてしまったのか。

そして、なぜ亜月ねねの場合だけ、同情よりも「自業自得」の声のほうが大きくなってしまったのでしょうか。

亜月ねねのプロフィールと経歴

  • 名前=亜月ねね(あづき・ねね)
  • 職業=漫画家・イラストレーター
  • 出身=東京都
  • 学歴=美術大学の油絵学科を卒業
  • 代表作=『みいちゃんと山田さん』(講談社「マガジンポケット」・全7巻)
  • X=フォロワー約20.5万人(2026年9月28日時点)
『みいちゃんと山田さん』最終7巻の表紙(講談社公式サイトより引用)
引用元:講談社公式サイト『みいちゃんと山田さん(7)』製品詳細(https://www.kodansha.co.jp/comic/products/0000430475)

もともとは漫画家になるのをあきらめ、会社員として働きながら趣味でせっせと絵を描いていた人で、Xに上げていた短編に出版社から声がかかって連載にたどり着いた、と本人がインタビューで語っている異色の経歴の持ち主。

『みいちゃんと山田さん』(通称みい山)は、2012年の新宿・歌舞伎町のキャバクラを舞台に、そこで働く山田さんと、何をやっても少しうまくいかない新人のみいちゃんを描いた作品。

みいちゃんは軽い知的障害をうかがわせる女の子として描かれていて、物語は冒頭でみいちゃんが殺されてしまうまでの12か月だと予告してから始まります。

本屋の棚をにぎわせ、2026年度の「このマンガがすごい!」オトコ編で4位に入り、コミックスは累計300万部を超えたと報じられている大ヒット作です。

  • 2024年2月まで 「ダイアナ」というXのアカウントで漫画の絵を担当(本人の説明)
  • 2024年 「マガジンポケット」で『みいちゃんと山田さん』の連載を開始
  • 2026年7月26日 テレビアニメ化(2027年放送予定)を発表
  • 2026年7月31日 「ダイアナ」を運営していたのは自分ではない(絵の担当だった)と説明
  • 2026年8月 連載が完結
  • 2026年9月9日 最終7巻が発売
  • 2026年9月22日 裏アカウントの疑惑が広まる
  • 2026年9月26日 住所が特定されたという話が広まる
  • 2026年9月27日 掲示板の管理人が、作者のものらしい書き込みの接続元の記録を明かしたとされる
  • 2026年9月28日 「住所の次は旦那バレ」という投稿が広まる
  • 2026年9月28日 講談社が取材に、警察への情報提供と、アニメ化をめぐって「反省すべき点は少なからずあった」ことを明かす
  • 2026年9月29日 作者の「代理人弁護士」を名乗って届いた削除の依頼が、掲示板で荒らしとされた書き込みと同じ接続元から送られていたとされる

「ダイアナ」は、夜の仕事やパパ活を題材にした漫画を投稿していたXのアカウントで、亜月ねねはそこで絵を描いていたひとり。

『みいちゃんと山田さん』も、もとはダイアナ名義で投稿された短編が始まりだったとされます。

アニメ化の発表のあと、ダイアナの運営も本人で、体験談のような漫画は実体験なのではと疑う声が広がり、それに答えたのが7月31日の「別人です」という説明。

本来ならお祝いムードになるはずだったアニメ化の発表は、こうして2か月におよぶ泥沼の騒ぎの始まりにもなってしまいました。

住所特定の発端は掲示板の書き込み

亜月ねねの身元をめぐっては、8月の終わりごろから、作者の身辺を知るとされる人物の書き込みもまじえて、本名や顔写真とされるものが出回っていました。

作品に批判的な人たちが集まる匿名の掲示板では、ネット上に散らばった手がかりをつなぎ合わせて名前や住所を割り出す「特定」が進んでいましたが、8月の終わりの時点では、住まいはまだ探している途中だったとされます。

そこから身元が割れるまでの流れは、掲示板の説明によると次の4段階。

  • 身元探しが進む掲示板に、作者の名字としてまったく別の名前を挙げる書き込み(2回あったとされ、のちに偽の情報とされる)
  • 書き込んだ人が出版社のインスタのリンクを貼るが、リンクに付いていた〈共有した人〉の情報から、貼った人自身のインスタが分かってしまう
  • 9月26日、作者の身辺の情報を流してきたとされる人物が、別の掲示板に「作者のもの」としてインスタを出し、さきほどのアカウントと同じだと気づかれる
  • そのインスタに載っていた通販サイトの画面に、郵便番号と名前が写っていたとされる

「自分のインスタ貼って」というのも、貼ったのは出版社のリンクで、そこに自分のアカウントの情報がくっついていた、ということです。

 

見つかったインスタはすぐに消されたものの、画面のスクショを保存していた人がいたらしく、写っていた郵便番号から住んでいる地域が一気に絞り込まれたのだとか。

同じ9月26日の夜には、本名から作者が会社を立ち上げていたことも分かったとされ、その会社の、誰でも見られる登記に載った住所がそのまま作者の住まいでもある、とまで言われるようになりました。

もっとも、作者本人のXにこの件に触れた投稿はなく、書き込みの主が本当に作者だったのかは、外からは確かめようがありません。

書き込みの主が誰かは分からなくても、リンク1本と画面1枚から身元までたどれてしまう仕組みだけは、誰でも手元のスマホで確かめられます。

インスタの共有リンクという落とし穴

気になった投稿をLINEで友だちに送るとき、インスタの「リンクをコピー」を使っている人は多いのではないでしょうか。

実はそうしてコピーしたリンクの末尾には、「?igsh=」から始まる英数字の並びが付いていて、ここに誰がそのリンクを共有したのかという情報が入っています。

スマホで受け取った人がリンクを開くと、共有した人のアカウントが画面にポンと表示されることがあり、別のアカウントを持っている人ほど、そこから知られたくない方のアカウントが相手に伝わってしまうんです。

2024年6月には注意が呼びかけられていたので、もう2年以上前からある落とし穴です。

 

手軽に通販サイトの画面を撮って載せるときも、届け先の欄に名前と郵便番号がそのまま残っていることがあります。

9月22日の裏アカウント騒ぎで手がかりにされたのも、作者がファン向けに載せていた飼い猫の写真と見比べられた絨毯の模様や、アカウント名に入っていた作者の誕生日と同じ数字でした。

どれも、気づいてしまえば手元でふさげるものばかり。

  • インスタのリンクは、送る前に「?」から後ろを消す
  • 通販の画面は、届け先の欄を切り取ってから載せる
  • 表と裏のアカウントで、同じ部屋・同じペット・同じ数字を使わない

ネットリテラシーを説いていた裏アカウント

とはいえ、うっかり身元を知られてしまう人なら、ネット上にはほかにもいくらでも。

それでも亜月ねねの件がここまで笑われているのは、その人がそれまで何を言ってきたかに理由がありそうです。

9月22日に作者のものではと言われ始めた裏アカウントは、画面の向こうで作品や作者を批判する人たちに強い言葉で言い返し、作者の見た目を「美形」とほめたり、批判する人を「頭みいちゃん系」と呼んだりする書き込みまであったとされるアカウントでした。

 

いまXで並べられている、その書き込みとされる言葉がこちら。

「140文字でも知性って出るから。」

「正直、割と真面目なレベルで貴方が猿に見えます。」

「高校レベルでいいので民法の教科書買ってネットリテラシーを学べ」

こうした言葉を残したとされる人が、リンクの仕組みを知らないまま身元探しの掲示板に書き込み、自分の身元を明かしてしまったわけです。

人にはあれだけ説教していたとされるのに、話がここまできれいに重なると、正直、笑うしかありません。

 

もうひとつ、多くの人が引っかかっているのが、書き込みの目的。

掲示板の説明どおりなら、あの書き込みは、身元探しの目を別の名字へそらすための「偽の情報」だったことになります。

しかも9月27日には、身元探しが進んでいた掲示板の管理人が、作者のものらしい書き込みの接続元の記録を明かしたのだとか。

ネットにつないだ回線の番号(IPアドレス)や、使っていたスマホやブラウザの種類といった記録で、それと同じ記録の残る8月末の書き込みまで並べられました。

 

並んだ中で私がいちばんぞっとしたのは、2026年8月28日の書き込み。

その日の掲示板では、モザイクのかかった一軒家が作者の家として挙げられ、その家の持ち主の会社の情報まで貼られていたんです。

そこへ「漫画家ってある程度売れると法人化するからビンゴかも」と、ここが作者の家だと思わせるような書き込みが入っていました。

その家は、のちに作者とはまったく関係のない家だったとされています。

書き込んだのが作者で、名字だけでなく関係のない家まで自分の身代わりに差し出そうとしていたのなら、これはもう笑える話ではありません。

住所を探される怖さを、いちばん分かっていたのは本人のはずなのに。

「代理人弁護士」を名乗った削除依頼

疑いの話は、それだけでは終わりませんでした。

亜月ねねをめぐる騒ぎを取り上げていた漫画のニュースをまとめるサイトには、2026年9月9日から、「亜月ねね代理人弁護士」を名乗る人物から記事を消してほしいという依頼が何度も届いていたそうです。

28日の夜、サイトの運営者がそのうちの1通の画面を、メールアドレスと接続元を伏せて公開しました。

中身は、作者の本名や旧姓、出身地や出身校、家族のことまで載った記事はプライバシーの侵害なので、記事ごと消してほしいというもの。

29日の朝になると、運営者は伏せていた部分もそのまま出し直し、「IPアドレス一致しています」と書き添えています。

一致したとされる相手は、身元探しが進んでいた、あの掲示板の管理用のスレッドにあった書き込み。

削除の依頼が始まる1週間ほど前の9月2日に、管理人から「荒らし」と認定され、接続元を公開されていたものです。

 

引っかかるのは、名乗っていたのが「代理人弁護士」という肩書きだけだったこと。

弁護士の名前も事務所の名前もなく、連絡先は誰でも作れる無料のメールアドレスでした。

弁護士が依頼人の代わりに記事の削除を求めるなら、自分の名前と所属する事務所を名乗るのがふつうでしょう。

弁護士ではない人が弁護士を名乗ることは、弁護士法でも禁じられています。

Xで挙がっている見方は、大きく分けて3つ。

  • 作者本人が弁護士のふりをして書いた
  • 名前を出さずに動く、本物の弁護士がいる
  • 作者とは関係のない誰かが、弁護士を名乗っている

どれが本当なのかは、依頼を受けたサイトの側も含めて、まだ誰にも確かめられていません。

 

ただ、もし1つ目だったとしたら、これまで疑われてきたこととあまりにもきれいにつながってしまいます。

ここでもう一度、2か月前の本人の言葉を読み返してみます。

2026年7月31日、亜月ねねは自分のXに、事実と異なる情報が広がっているので「訂正させてください」と前置きしたうえで、こう書いていました。

「ダイアナというアカウントと私(亜月ねね)は別人です」

ダイアナから受け取った台本をもとに絵を描いていただけで、アカウントの運営にも、投稿の文章にも、漫画の原作にも関わっていない。

パパ活や性風俗、キャバクラで働いた経験もない。

『みいちゃんと山田さん』は、原作も作画も自分が手がけている作品だ。

当時の報道がまとめたところでは、声明はそう一つずつ線を引いていました。

ただ、その直後から、2024年にウェブメディアに載ったとされるインタビュー記事の画面が並べられ、学生時代にキャバクラで働いていたと語っているではないか、と声明との食い違いを指摘する声も出ています。

その記事はいま読めない状態で、出回っている画面だけでは、本当にそう書かれていたのかを確かめることはできません。

本人は2025年のインタビューでは、作品のために実際にキャバクラやホストクラブを訪れて取材した、と説明しています。

そして2か月。

掲示板の説明どおりなら、別の名字を書き込んだのも、関係のない家に「ビンゴかも」と書いたのも、弁護士を名乗ったのも、同じ人だったことになります。

Xで出ている問いのひとつは、「訂正させてください」と自分の言葉で線を引いた人が、今度は訂正されるべき側の情報を流していたのではないか、というものです。

声明のあと、本人のXは8月16日の完結の報告を最後に止まったままです。

ダイアナとは別人だという説明も、裏アカウントも、別の名字を挙げた書き込みも、関係のない家も、そして代理人弁護士も、疑われていることを並べると、どれも「自分ではない誰か」を立てた話になっているんです。

本名や家族のことを消してほしいという願いそのものは、誰が書いたにせよ、あって当然のもの。

それを頼む手段にまで借り物の肩書きを使っていたのだとしたら、本当に守ってほしいときの言葉まで、届かなくなってしまいそうです。

そしてここまで怒りが大きくなった裏には、この2か月分の下地もあります。

アニメ化発表から続いた不信

アニメ化が発表されたとき、この作品には大きな期待も寄せられていました。

ところが発表のあとに続いたのは、その期待を裏切るような出来事ばかりでした。

  • 発表が2026年7月26日で、相模原市の障害者施設で45人が殺傷された事件からちょうど10年の日だった(「よりによって」という声が上がった)
  • 7月31日の、ダイアナとは別人だという説明に、ダイアナ名義で出ていた頃の『みいちゃんと山田さん』の表紙などが並べられた
  • 8月に入ると、作者がファン向けに作品を載せていたFANBOXの投稿や、インタビュー記事が次々と見られない状態になった
  • 8月から9月にかけて、全国手をつなぐ育成会連合会、全国「精神病」者集団、日本自閉症協会の3団体が、アニメ化への意見書を出した
  • 意見書では、講談社の編集部員の「人の不幸話はめちゃくちゃ楽しい」という発言や、作者が認知機能の落ちた状態を「みいちゃん化」と呼んだこと、ダイアナ名義の作品で特別支援学級を否定的に描いたことが懸念として挙げられた

そのたびに作者の側から返ってきたのは、短い説明か沈黙。

 

その上に乗ったのが、9月22日の裏アカウントの疑惑と、今回の住所や家族の話。

ここまで来ると、タイムラインを追ってきた多くの人にとって今回の特定は、突発的な新しい事件というより、2か月分の疑いの「答え合わせ」に見えてしまったのでしょう。

ふつうの特定なら真っ先に上がる「やり過ぎだ」より先に、「やっぱり」という声が出たのは、そのためだと思います。

みいちゃんが悪口として使われる現実

借金や夜の世界に落ちていく人を描いた漫画なら、『闇金ウシジマくん』のように、これまでにもたくさんありました。

では、同じように重たいものを描いた作品と、何が違ったのか。

いちばん大きいのは、この作品の中心にいるのが、知的障害をうかがわせる女の子で、しかもそのモデルは実在の女性だったと伝えられていることでしょう。

 

知的障害のある人や家族でつくる全国手をつなぐ育成会連合会の8月の意見書によると、作者は、軽い知的障害があって障害者手帳を持っていた女性をみいちゃんのモデルにした、と話していたそうです。

同じ意見書には、「みいちゃん」という名前が、知的障害や発達の特性がある女性をからかう言葉として、すでに現実に使われているという報告も。

7月には、学校で「みいちゃん」と呼ばれているいじめ被害者からDMが届いた、とXで明かした人もいます。

 

みいちゃんのような子の物語を読むとき、私たちはどこかで「この作者は、みいちゃんの味方だ」と信じてページをめくっていて、アニメ化に「支援に繋がる」と期待した人たちも、同じように信じていたはずです。

意見書が問題にした「みいちゃん化」は状態のたとえでしたが、裏アカウントにあったとされる「頭みいちゃん系」は、人を指して呼ぶ言い方。

だからこそ、この言い方は、恥ずかしいだけの美形の自画自賛よりも読んできた人の心にずっと重く響いていて、もしあれが本人の言葉なら、主人公の名前を悪口にしていたのは、ほかでもない名前をつけた人だったことになります。

批判してきた人からも出た「やり過ぎ」

住所の話が広がったのと同じ9月26日の夜には、作者の家の前だとされる場所で、障害者手帳を手に持って撮られた写真まで出回りました。

「ねね巡礼」という言葉と一緒に広められた、不穏な1枚。

写っているのは手帳を持つ手と、その後ろのぼやけた建物だけで、撮ったのが誰なのかも、本当にその家なのかも分かっていません。

 

見過ごせないのが、写真に添えられていた「障害者の間で『ねね巡礼』が流行」という説明です。

作者の書き込みや描き方にずっと怒ってきた人の中からも、こんな声が出ています。

怒りに任せて家の前でスマホのカメラを構えた時点で、今度は構えた側が責められる番になる。

怒ってきた人ほど、そこを分かっているのでしょう。

 

さらに9月28日の未明には、「住所の次は旦那バレ」という投稿まで出回り、夫とされる人物の名前や勤め先まで並べられるようになりました。

その勤め先を持ち出して、恵まれた暮らしの側から弱い立場の人を描いていたのか、と怒りを重ねる投稿もあり、話はもう作者ひとりのことでは済まなくなっています。

「障害を差別的に描いた漫画をアニメ化するなという至極真っ当な論争だったのに」と、話がずれていくことを怖がる声まで出てきました。

 

こうした書き込みについて、版元の講談社は同じ28日の夕方、弁護士ドットコムニュースの取材に「すでに警察に情報提供したうえで対応を進めております」と答え、プライバシーを暴いたり身の安全を脅かしたりする行為は「厳に慎んでいただきますよう」と呼びかけています。

アニメ化をめぐっても「反省すべき点は少なからずあった」とし、会社としての見解も、しかるべき時期に発表を検討しているとのこと。

ただ、こうなるまでの2か月、講談社からは何も聞こえてこなかったので、Xでは「遅すぎる」という声も少なくありません。

この騒ぎを終わらせられるのは、亜月ねね本人の言葉だけですよね。