甲斐拓也の楽天トレードで残り3年9億は誰が払う?
選手を1人も出さずに、ソフトバンクで日本一を何度も経験した捕手・甲斐拓也を手に入れる。
2026年10月30日に楽天が発表したのは、そんなトレードでした。
\WELCOME to TOHOKU!/
金銭トレードにて、読売ジャイアンツから #甲斐拓也 選手を獲得することに合意しましたので、お知らせいたします。
— 東北楽天ゴールデンイーグルス (@Rakuten__Eagles) 2026年10月30日
交換する選手のいない、お金だけで決まる「金銭トレード」で、甲斐が巨人から楽天へ移ることになりました。
2024年の冬にソフトバンクからFA(一定の年数を過ごした選手が、自分で移籍先を選べる仕組み)で巨人へ来て、まだ2年しかたっていません。
発表の直後からネットで目立っていたのは、「残りの年俸はどうなるの?」という声です。
5年契約のうち残りは3年で、年俸を合わせると9億円になると見られています。
本当に楽天が、それを全部払うのでしょうか。
残り3年9億の中身
報道によると、甲斐が巨人と結んだのは5年で総額15億円の契約だったそうです(金額は推定)。
2シーズンが終わって残るのは2029年までの3年なので、1年あたり3億円なら3年で9億円になります。
巨人・甲斐拓也が楽天に金銭トレード
5年15億円の契約の2年目が終了し、残りは3年9億円と見られます。
— 青味噌 (@Aomiso97) 2026年10月30日
もっとも、この15億円は、球団が公式に出した数字ではありません。
日本のプロ野球では年俸を球団も選手もはっきり言わないのがふつうで、新聞に出る金額にはたいてい「推定」が付いています。
「9億」も正確には、そう見られている数字ということ。
11月で34歳になる捕手に、これから3年で9億円。
しかも今季は、ほとんど1軍で試合に出られなかった捕手です。
思わず二度見してしまう組み合わせですよね。
年俸は楽天が払うのか
てか甲斐の残りの契約は楽天が引き継ぐんか?
— ケーシーマギーニキ (@magigo33g) 2026年10月30日
「残りの9億円を楽天が全部引き取った」とは、実はどの報道にも書かれていません。
10月30日の時点で、スポーツ報知・日刊スポーツ・スポニチ・デイリーのどこにも、年俸をどちらが払うのかも、トレードのお金の額も出ていないんです。
報知が書いているのは、「巨人との契約は29年まで残されていた」「前例の少ない、契約期間中のトレード移籍」というところまででした。
では、プロ野球の決まりではどうなっているのか。
決まりではっきりしているのは「今年の分」までです。
日本のプロ野球には「野球協約」というルールブックがあり、その第105条には、選手の契約を別の球団へ移したとき、球団の権利も義務も受け取った球団に移ると書かれています。
ただ、ここでいう契約は、プロ野球で毎年結び直す1年分の契約書(統一契約書)のことで、何年分もの約束の話はここには出てきません。
さらに第93条には、トレードで移っても、その年の年俸の額は変えないと決められています。
しかも年俸の対象は毎年2月から11月までの10か月(第87条)なので、今年の分はもうほとんど払い終わっている計算です。
つまり話の中心は、来年からの3年分。
球団や日本野球機構(NPB)の公式の説明ではありませんが、角谷法律事務所の解説によると、複数年契約でも選手は毎年あらためて1年分の契約書にサインしているそうです。
「5年15億」のような何年分もの約束は、その契約書とは別に交わしたもの、という扱いになります。
その別の約束までトレードで楽天へ移るのかは、協約にも契約書の様式にも書かれていません。
過去の例も、少し事情が違います。
2021年7月に巨人から楽天へ金銭トレードで移った捕手の炭谷銀仁朗も、同じ年の8月に日本ハムから巨人へ、お金も選手も動かない無償トレードで移った強打者の中田翔も、3年契約の最後の年でした。
最後の年だったので、翌年の年俸は移った先の球団とあらためて決め直しています。
何年も残った契約の途中で動く例は、ほとんど見当たりません。
金銭トレードの年俸について、決まりとして書かれていることと、ふつうは表に出ないことは次のとおりです。
- 決まり=その年の年俸の額は、移っても変わらない(協約第93条)
- 決まり=翌年の契約を結び直すときも、1億円を超える年俸は、本人が同意しなければ40%までしか下げられない(協約第92条)
- ふつう非公表=来年からの複数年の約束が移るかどうか
- ふつう非公表=「金銭」の額(年俸とは別の、移籍の代わりに払うお金)
「全部引き取ったってこと?」という疑問に、外からはっきり答えられる人はいない、ということですね。
巨人も一部を払っている説
楽天はマジで3年×3億負担するんか?
そんなうまい話ある?— 野球人 (@yakyujinsan) 2026年10月30日
同じように感じた人は、ほかにもいました。
返信には「ヘタしたらいくらかは巨人が負担するかもですね」「メジャーみたいな感じになるんじゃないか」という声が並び、「流石に虫が良過ぎるので巨人側もそれなりの負担はしたと思う」と書いた人も。
たしかに大リーグでは、トレードで選手を送り出す球団が、残りの年俸の一部を払い続ける取り決めがよく見られ、その額まで報じられることも珍しくありません。
一方で日本のトレードは、お金の額も中身も、ふつうは表に出てこないんです。
今回の両球団の発表に書かれていたのも、交換する選手がいない「金銭トレード」だということだけでした。
楽天が全部払っているのか、巨人も一部を持っているのか、両球団は何も言っていないのが実際のところ。
チームづくりの責任者である巨人の水野雄仁編成本部長も、報じられたコメントの中でお金の話には触れていません。
甲斐拓也のプロフィール
【球団発表】
東北楽天は、金銭トレードにて、読売ジャイアンツから #甲斐拓也 選手を獲得することに合意したことを発表しました。【甲斐 拓也(かい たくや)選手 プロフィール】
■ポジション:捕手
■生年月日:1992年11月5日生(33歳)
■出身地:大分県
■投打:右投右打— パ・リーグ.com / パーソル パ・リーグTV【公式】 (@PacificleagueTV) 2026年10月30日
そもそも、楽天が年俸の行方もはっきりしないまま迎えた甲斐拓也とは、どんな捕手なのか。
育成選手から日本代表のマスクをかぶるところまで上りつめた捕手です。
- 名前:甲斐拓也(かい たくや)
- 生まれ:1992年11月5日、大分県大分市
- 身長・体重:170cm・87kg
- 投打:右投右打
- 出身校:楊志館高校
- プロ入り:2010年の育成ドラフト6位でソフトバンクへ
- 背番号:130→62→19(ソフトバンク)→10(巨人)
高校3年の夏は大分大会の初戦で敗れていて、高校の監督がソフトバンクのスカウトに頼んで入団テストを受けさせてもらったのが、プロへの入り口だったと紹介されています。
育成選手は背番号が3桁で、そのままでは1軍の試合に出られない立場です。
1年目は2軍の公式戦にも出られず、大学や社会人、独立リーグとの試合でマスクをかぶっていたと伝えられています。
1軍に出られる「支配下」の選手になれたのは、高校を出て3年目の2013年11月でした。
レギュラーの捕手になった2017年には、守備のうまさで選ばれるゴールデングラブ賞と、ポジションごとにその年いちばんの選手が選ばれるベストナインを、いきなり受賞しています。
ゴールデングラブ賞は育成出身の捕手として初めて、ベストナインは育成出身の選手として初めての受賞でした。
名前が全国に広まったのは、2018年の日本シリーズです。
走ってくる広島を相手に盗塁を6回続けて刺し、シリーズ新記録をつくって、育成出身の選手として初めて日本シリーズのMVPに選ばれました。
強い肩についた「甲斐キャノン」という呼び名は、アニメ『機動戦士ガンダム』のガンキャノンと、そのパイロットのカイ・シデンにかけたものだそうです。
ソフトバンクは2017年から2020年まで4年続けて日本一になり、その中心でマスクをかぶっていたのが甲斐。
2019年には、育成出身の選手として初めてシーズン2桁本塁打を打ち、年俸も育成出身で初めて1億円を超えました。
日本代表としても、2つの大会で世界一を経験しています。
2021年の東京五輪では、8月2日のアメリカ戦の延長10回裏に初球を打ち返してサヨナラ打を放ち、チームはそのまま金メダルへ。
2023年のWBCでは捕手の一人として、準決勝のメキシコ戦で盗塁を刺し、決勝進出を後押ししました。
ゴールデングラブ賞は2024年までに7回。
同じ2024年には、育成出身の選手として初めて通算1000試合出場にも届きました。
そしてその冬、FAで巨人へ移り、前監督の阿部慎之助が現役時代につけていた背番号「10」を受け継いでいます。
巨人が手放した理由
巨人での2年間は、思うようにはいきませんでした。
1年目は68試合に出ましたが、夏に右手の骨を折って離脱しています。
2年目の今季はオープン戦で結果が出ず、10年ぶりに開幕を2軍で迎えたと報じられました。
1軍では13試合で打率1割、スタメンで捕手として出たのは3試合だけ。
それでも今季打った2本のヒットは、どちらも試合を決めるホームランだったそうです。
水野編成本部長がトレードの理由を話した言葉は、巨人の情報を発信しているアカウントが書き起こしています。
甲斐拓也選手の金銭トレードについて水野編成本部長
「せっかく来てもらったんですけど、なかなか出場機会がなかったので、なんとかいい形で甲斐選手がまた今後も活躍できる場を、と。たまたま楽天さんと気持ちが折り合ったというところで移籍っていうことになりました」— 読 売 ジ ャ イ ア ン ツ 情 報 部 (@Giants___info) 2026年10月30日
いっぽう巨人ファンの中には、こう書いた人もいました。
甲斐には申し訳ないけど、甲斐の3年9億が浮いたのデカい。
— さざれ石 (@YG_Sazareishi) 2026年10月30日
ただ、巨人も一部を払っているなら、まるごと「浮いた」ことにはなりません。
巨人は資金難なのか
2年前に15億円で迎えた捕手を、契約の途中で手放す。
それだけを見ると、巨人がお金に困りはじめたのでは、と感じた人もいるかもしれません。
発表の直後には、次の補強に向けた動きでは、という読みも出ていました。
えーーーーー甲斐拓也選手楽天へトレード?!?!
これは坂倉選手とりにいく?!
— 桃宮唯花(東京CuteCute) 11/8生誕祭、目指せ100人! (@TCC_yuika) 2026年10月30日
坂倉選手とは、今オフに国内FA権を持った広島の捕手・坂倉将吾のこと。
まずは、外から見える数字から。
出回っている巨人軍の決算の数字(球団の正式な発表とは別のもの)では、2025年度の売上高は約281億円で、2022年度の約217億円から3年続けて増えています。
もうけにあたる純利益は約3.8億円で、前の年の約6.9億円から半分近くまで減ったものの、黒字は保ったまま。
お客さんも、2025年は東京ドームなどの主催71試合で約282万人、1試合あたり4万人近くが入っていました。
お金の使い方も、ここ2年で目立っています。
甲斐を迎えた2024年の冬には、中日から守護神のライデル・マルティネスも獲得していて、こちらは4年総額50億円以上と報じられました。
そして今オフも、スポーツ報知は、巨人がFA権を持つ広島の森下暢仁投手と床田寛樹投手を調べていると伝えています(名前が挙がっているのは投手の2人で、FAを使うかもまだ決まっていません)。
FAで来た捕手を数年で金銭トレードに出したことは、前にもありました。
2019年にFAで迎えた炭谷銀仁朗を、2021年に楽天へ金銭トレードで出したのと、ほとんど同じ道筋です。
お金がなくなったというより、出番のない選手の分を空けて、次の補強に回そうとしていると見たほうが、外から見える数字とはかみ合います。
楽天が甲斐を求めた理由
では、楽天はなぜ引き受けたのでしょうか。
報道によると、楽天の捕手はこの秋、こう動いています。
- 主に捕手を務めてきた太田光=国内FA権を使う意向
- ベテラン捕手の伊藤光と、27歳の石原彪=戦力外
- ドラフト1位=青山学院大の捕手・渡部海
来季は捕手の顔ぶれが大きく変わるかもしれず、若い捕手に教えられる経験のある捕手が、チームからいなくなりかけていました。
スポーツ報知はこれを楽天の「弱点」と書き、経験豊富な甲斐の獲得で補う、と伝えています。
日本シリーズでも五輪でもWBCでも、勝つ試合のマスクをかぶってきた捕手が、若い捕手のそばに来るわけですね。
日刊スポーツは、若い捕手の「先生役」としての期待も大きいと伝えていました。
楽天ファンからは、こんな声も。
甲斐拓也のトレードのポイント
・幾度の優勝経験、WBCも経験、経験ある捕手としては最強格。
・対価に選手を出さず、金銭だけで済んだ。
・渡部くんらの生きる見本にもなりうる懸念点
・年俸が3億、残り3年。全部楽天負担なのか、巨人が幾らか負担してくれるのかは分からない。・肩の衰え
— ステフェンシャギワ(🦅) (@chargiPB555) 2026年10月30日
トレードが決まった日の取材に、甲斐本人は「僕も勝ちに飢えている、いろんなものに飢えてるところがいっぱいあるので。恩返しができればなと思います」と話したそうです。
2年前に巨人が払ったもの
2年前の冬、甲斐をFAで迎えたとき、巨人は年俸のほかに、選手を1人ソフトバンクへ渡しています。
FAで選手を取った球団が、元の球団へ代わりの選手を渡す「人的補償」という仕組み(お金の補償が加わることもあります)で、2025年1月にソフトバンクが選んだのは巨人の伊藤優輔投手でした。
- 2年前の巨人:5年15億円(推定)の契約と、人的補償の伊藤優輔投手
- 今回の楽天:金銭(額は非公表)。来年からの年俸の扱いも非公表。差し出した選手は0人
同じ捕手を迎えるのに、2年前の巨人は選手を1人手放し、今回の楽天は1人も手放していません。
トレードの形そのものを「美味しい」と受け止めた人もいました。
甲斐も来年で35だし渡部育成期間的にちょうど良いよな
流石の年俸高えなと思うが金銭で取れるんなら美味しいのはそう— 赤味噌 (@Redmiso97) 2026年10月30日
11月3日には、仙台で甲斐の入団会見が開かれる予定です。
ただ、残り3年9億円の行方はふだん表に出ない話で、会見のあともはっきりしないままかもしれませんね。











