「今回のAPEX世界大会ゴミすぎぃ!」

2026年10月30日の昼過ぎ、APEXの配信で知られるボドカがXにこう書き込みました。

ボドカは配信者であると同時に、プロチームRIDDLE ORDERを運営している側の人。

いまアメリカのラスベガスでは、Apex Legendsの世界大会「ALGS Year 6 Split 2 Playoffs」が開かれていて、世界の40チームが賞金総額200万ドルを争っています。

ところがこの一言には、何がゴミなのかが一つも書かれていません。

しかも同じ日の朝には、同じ大会を見ていた別の配信者が、まるで逆のことを書いていました。

同じ大会が、ある人には「おもろい」、ある人には「ゴミ」に見える。

「ゴミ」に見えた1日目には、何度も止まった試合と、試合数がそろわない順位表がありました。

チームを持つ人が「ゴミ」と書いた1日目のカラクリを、大会の作りと数字からわかりやすく解説していきたいと思います。


「ゴミすぎぃ」の中身

ボドカはこの日の朝に「APEX世界大会ウォチパ リドル応援する」と投稿して、朝から配信で試合を見ていました。

ウォチパはウォッチパーティーの略で、公式の中継を流しながら配信者がみんなと一緒に見て応援する配信のことです。

応援していたRIDDLE(大会での登録名はRIDDLE ORDER ZERO)は、ボドカ自身が運営するチームで、Dグループに入っています。

 

返信欄には「今回『の』?『も』じゃなくて?」「今回もでは…?」と、「ALGSはいつもこう」と分かっている人たちのお約束のいじりも。

ただ、同じ返信欄には「なんか止まりまくってテンポわるかったみたいね」「ポーズが多いからですか?」という声も混じっていました。

この日の試合を見ていた人なら、「ゴミ」と聞いてまず思い浮かべたのは、何度も止まった試合だったのではないでしょうか。

 

この一言には、「これがオーナーってまじ?笑」と笑う声もあれば、「本調子出せなかった選手絶対多いよね…!涙」と、選手の側を思う声もありました。

 

同じころ、RIDDLEについてはこんな声も。

「アンリミ」はUNLIMITのことで、RIDDLEと同じDグループにいる、日本を含むAPAC North(北アジア太平洋)地域のチームです。

今年7月の前回のプレーオフ(Split 1 Playoffs)で優勝したチームでもあります。

同じ地域の王者は順位表の上にいて、自分のチームは下のほうで、何度も止まる試合に振り回されている。


止まって全部やり直した1試合目

1日目の3つ目の対戦、BとDのグループ戦が始まったのは日本時間の10時45分ごろ。

その1試合目の途中で、試合が止まります。

観戦していた人の説明では、複数のチームで回線が切れてポーズがかかり、30分以上たっても再開できず、再開した直後には動きがコマ送りになったそうです。

そして最後は、すでに全滅していたチームまで戻して、1試合目をまるごとやり直すことに。

 

2023年にポーズが導入されたときの、ゲームを運営するEAの説明では、ポーズをかけるかどうかを決めるのは運営で、選手やコーチが自分で試合を止めることはできません。

撃ち合いの最中には止まらず、どのチームも準備ができたら30秒のカウントのあと、止まったところからそのまま再開する決まりです。

つまり止めることはあっても、やり直すことはめったにない。

もともとポーズは、回線が落ちた一部の選手だけが損をしないように、全員の試合をまとめて止める仕組みとして入りました。

見ている側に「止まりまくり」と映る時間は、裏を返せば、1チームだけが置いていかれないように全員で待っている時間でもあります。

実際、Xには「ALGSでリマッチ(試合のやり直し)はかなり珍しい」という声が出て、RIDDLE ORDER ZEROの選手のAssii(あっしー)も「前代未聞の試合中リマッチ」と書いたほどです。

 

この日は、ほかの試合でも何度も止まっています。

2023年7月にロンドンで開かれた同じSplit 2 Playoffsでも、その日の最初の試合が技術トラブルでやり直しになり、当時は外部からの攻撃まで疑われました。

EAは海外メディアの取材に「会場の技術的な問題で、攻撃の証拠はない」と答えています。

「今回『も』じゃなくて?」というツッコミが出るのは、同じことが前にもあったからなんですよね。

 

見ている側は、良い場面で止まるたびに待たされます。

選手の側は、30分以上も集中を切らさずに待ったあと、途中まで積み上げた試合を最初からやり直すことになる。

その選手たちを抱えているのが、ボドカです。

しかもRIDDLEは、2026年1月に札幌で開かれたALGSの年間の頂点を決める世界大会(Championship)で、ボドカ自身の言葉を借りれば「あと1ポイント差」で敗退しています。

そのときボドカは、現地でウォチパ配信の最中。

あのときの投稿は「あと1ポイント差やったけど、現地で応援できて楽しかった!」でした。

1ポイントの重さを知っている人が、今回は何も説明せずに「ゴミすぎぃ」とだけ書いたわけです。


試合数がそろわない順位表

試合が終わったあとの順位表にも、「ゴミ」に見える並びが出ていました。

40チームはA〜Dの4グループに分かれていて、1回の対戦では2つのグループの計20チームが同じマップに降りて6試合を戦います。

ほかの3グループと1回ずつ当たるので、1チームが予選にあたるグループステージで戦うのは全部で18試合です。

1日目に行われたのは、AとB、CとD、BとDの3つの対戦。

つまり1日目が終わった時点で、BとDは12試合、AとCはまだ6試合しか戦っていません。

 

それでも順位表は、40チームを1つの列に並べます。

BとDの対戦が始まる前、全チームが6試合を終えたところでは、こんな並びでした。

このときRIDDLE ORDER ZEROは33位で、19ポイントです。

ボドカの投稿はBとDの対戦の途中でしたが、終わってみればやり直しを挟んだその6試合で30ポイントを積み上げ、49ポイントで22位まで戻しています。

 

1日目を終えた順位から、APAC Northの主なチームを抜き出すと、こうでした。

  • UNLIMIT=3位・94ポイント(12試合)
  • White Grim Reaper=5位・82ポイント(12試合)
  • REJECT=9位・72ポイント(12試合)
  • KINOTROPE gaming=20位・53ポイント(12試合)
  • RIDDLE ORDER ZERO=22位・49ポイント(12試合)
  • ZETA DIVISION=37位・16ポイント(6試合)
  • LawsonTicketXone=38位・14ポイント(6試合)

全体の順位表を見ると、1位から4位まではすべてDグループのチームで、下の段にはまだ6試合しか戦っていないAとCのチームが多く並んでいます。

6試合のチームと12試合のチームを同じ列に並べれば、6試合の側が下に寄って見えるのは当然です。

ただ、ZETA DIVISIONとLawsonTicketXoneは、全チームが6試合を終えた時点でも36位と38位でした。


運に見える3つの仕組み

1試合で大きく点を取るチームもいれば、何もできずに0点で終わるチームも。

点の付き方は、1位が12ポイント、2位が9ポイント、16〜20位は0ポイントで、倒した相手1人につき1ポイントが足される仕組みです。

1位と16位以下では順位だけで12ポイントの差がつくので、安全地帯の寄り方ひとつで点が大きく動きます。

応援していると運ゲー(運で決まるゲーム)に見えてしまうのも無理はありません。

 

大会前には、応援する側のこんな願いも流れていました。

「安置」は安全地帯のことで、試合が進むにつれて縮んでいく円の中だけが生き残れる場所になります。

今回の大会で試合の行方を左右するのは、大きく分けてこの3つ。

  • 降りる場所は、事前の取り合いで決まる(POIドラフト)
  • 使えるキャラクターの一部が、対戦ごとに禁止される(レジェンドBAN)
  • 安全地帯がどこへ縮んでいくかは、1試合ごとに変わる

このうち、1試合ごとに変わるのは3つ目の安全地帯だけです。

大会の公式ページには、成績のよいチームほど、後のステージで降りる場所を選ぶ順番が有利になると書かれています。

 

会場の様子は、出場しているWhite Grim Reaperの選手の投稿にも写っていました。

タブレットには、マップの1つE-Districtのどこへどのチームが降りるかがロゴで並んでいます。

運に見える3つのうち2つは、試合が始まる前にもう決まっているんです。

試合の中に残る運といえば、安全地帯の寄り方や、移動中にほかのチームとかち合う巡り合わせくらい。

 

ただ、この日はそこにもう1つ、試合の外で決まったものが加わりました。

やり直した1試合目は、安全地帯の寄り方もすべて引き直し。

生き残っていたチームにも、全滅していたチームにも、自分の腕では動かせないところで1試合ぶんの結果が入れ替わったわけです。


1日目で落ちるチームはない

推しが下の段にいると、もう終わったような気がしてしまいますよね。

グループステージの順位で、大会から消えるチームは1つもありません。

18試合のあと、上位20チームは勝ち上がり側のWinners Roundへ、下位20チームは敗者復活側のElimination Round 1へ進みます。

どちらの側も、次は20チームで6試合を戦い、そこで下位10チームに入るのが「つまずき」。

上位20チームは、そこでつまずいてももう一度だけ決勝を目指す道が残ります。

下位20チームは、そこでつまずけばそれで終わりです。

 

1日目を終えて22位のRIDDLE ORDER ZEROと、20位との差は4ポイントで、倒した相手4人分しかありません。

それでも、RIDDLEを見てきた人の中には、こんなふうに構えている人もいました。

グループステージの残りは、日本時間31日の午前2時ごろから始まるAとC、BとC、AとDの3つの対戦です。

ZETA DIVISIONやLawsonTicketXoneのいるAグループは、ここで残りの12試合をまとめて戦います。

一方、RIDDLE ORDER ZEROのいるDグループに残っているのは、31日の10時30分ごろから始まるAとDの6試合だけ。

12試合を残すAとCのチームが点を積んでいけば、20位のラインはここから上がっていきます。

いまの4ポイント差は、そのまま追いかければ済む差ではありません。

その代わり、RIDDLEはグループステージの最後の対戦に出るので、ほかの対戦が終わったあとにあと何点あれば上位20に入れるかの目安を知ったうえで戦えます。

このプレーオフは、2027年1月にもう一度札幌で開かれるChampionshipの出場権争いにもつながる大会。

 

本当に落ちるチームが出るのは、日本時間11月1日(日)の午前2時ごろから始まるブラケットステージ(負けると落ちる勝ち抜き戦)です。

決勝は11月2日(月)の朝8時ごろからのマッチポイント方式で、50ポイントに届いたチームがそのあと1位を取った時点で優勝が決まります。

1日目の順位表を見るときは、次の3つを見ておくと、慌てずに済むはずです。

  • そのチームが、もう何試合を終えているか
  • 上位20チームまで、あと何ポイント足りないか
  • いまは落ちないステージか、落ちるステージか

順位表のずれは、試合数がそろえば消えます。

消えないのは、全滅したチームまで戻して1試合をやり直したという1日目の記録です。

1ポイント差で世界大会を去ったチームのオーナーの「ゴミすぎぃ」は、そこに向いていたと読むのが自然だと思います。