2026年10月21日、東京都西東京市のマンションで同居していた28歳の女性に暴行を加えて死なせたとして、38歳の女が傷害致死(暴行の末に相手を死なせた罪)の疑いで警視庁に逮捕されました。

2人はネットで知り合って一緒に暮らし、去年、養子縁組をして戸籍の上では親子になっていたと報じられています。

ニュースで長い名前が伝えられた直後から、「外国人なのか」「年下の相手の養子になったのは永住権目当てでは」という声が上がっています。

恋人どうしが親子の籍に入り、親になった38歳の女が逮捕され、しかも自分で110番していたのですから、何か裏があると考えるのは当然です。

なぜ永住権目当てと疑われたのか、そして警察の調べでいま何が分かっているのかを、順番に見ていきます。

西東京市のマンションで起きたこと

現場は、西東京市柳沢の、駅のすぐそばにあるマンションの一室です。

2026年9月3日の午前、女は自分で110番し、「パートナーがおととい外で暴行を受けて帰ってきて、意識がない」と伝えました。

駆けつけた警察官が部屋で女性を見つけ、その場で死亡が確認されています。

司法解剖の結果、頭や顔を含む全身にあざがあり、肋骨も何か所も折れていたことが分かっていて、死因は外傷性ショック(大きなけがで体の血の巡りが保てなくなる状態)でした。

 

亡くなった女性のご冥福を、心からお祈りします。

女が110番で話した「外で暴行を受けて帰ってきた」という話は、警視庁が周りの防犯カメラを調べると、映像と食い違っていました。

カメラには8月30日に2人がそろって部屋へ帰る姿が残っていて、そこから110番の日までのあいだ、どちらかが外へ出た形跡は見つからなかったと報じられています。

警視庁は、8月下旬から9月3日ごろにかけて、女が素手か鈍器のようなもので女性を殴ったとみていて、部屋からは凶器とみられる物をいくつも押収しました。

今回の逮捕より前の9月にも、女は部屋で見つかった大麻を持っていた疑いで逮捕され、その件ではすでに起訴(裁判にかけること)されています。

戸籍の上では親子だった2人

縁組では38歳の女が養親(親になる側)に、亡くなった28歳の女性が養子になっていて、この縁組を結んだのは2025年11月ごろと報じられています。

ネットでは38歳の女が年下の相手の養子になったと言われていましたが、実際はその反対で、日本の民法では年上の人を養子にできないので、この2人はもともとこの形でしか縁組できません。

報道で2人が同じ名字で呼ばれているのも、養子は養親の名字を名乗ると民法で決められているからです。

2人はインターネットのサイトで知り合い、2021年から一緒に暮らしていたそうです。

 

日本では同性どうしの結婚が認められていないので、一緒に暮らす同性のカップルが、同じ名字を名乗ったり財産を相続したりできるように、養子縁組を結婚の代わりに使う例は以前からあります。

ただ、この2人がなぜ縁組を選んだのかは報じられていません。

永住権目当てと言われてしまう理由

永住権目当てでは、と疑う声が上がったのは、そう思えてしまう材料がいくつも重なっていたからです。

  • 日本人と結婚すれば外国人も日本で暮らす資格を得られるため、偽装結婚でその資格を取ろうとした事件は、これまで何度も摘発されてきた
  • 恋人どうしなのに親子として同じ戸籍に入るという、ふつうでは考えにくいことをしていた
  • 漢字の名字と名前のあとに、長いカタカナが続く名前だった

報道によると、女は日本国籍で、親の片方は日本人、もう片方は東南アジアの出身です(亡くなった女性の国籍は報じられていません)。

日本国籍なら永住権の手続きは要らず、出入国在留管理庁の決まりでも、大人どうしの普通の養子縁組で日本にいる資格が得られる仕組みもありません。

 

ただ、日本国籍だと分かっても、「この人は日本の決まりの中で暮らしてきた人なのか」というモヤモヤまで晴れるわけではありません。

日本国籍と聞いても晴れないモヤモヤ

女が生まれたときから日本国籍なのか、あとから帰化して日本国籍を取ったのかは、今回の報道には書かれていないんです。

親の片方が日本人なら、生まれつき日本国籍の可能性もありますが、本当のところは分からないままです。

そこで、国がどんなことを確かめてから日本国籍を認めているのかを知ると、モヤモヤの正体が少しはっきりします。

帰化を認めるときに国が確かめる主な条件は、国籍法に書かれています。

  • 引き続き5年以上、日本に住所があること
  • ふだんの行いに問題がないこと(素行が善良であること)
  • 自分や家族の資産や技能で暮らしていけること
  • 暴力で政府を壊そうとする団体に加わっていないこと

法務局での審査では、これに加えて、日常生活に困らない程度の日本語の会話と読み書きができるかも確かめています。

国が確かめているのは、ふだんの行いに問題がないか、暮らしが成り立つか、日本語が使えるかまでで、日本の考え方や価値観をどこまで身につけているかを直接はかる項目は、条文にはありません。

 

日本国籍を認めたあとの扱いにも、永住との違いがあります。

永住者については、2024年の入管法(外国人の出入国や在留を決める法律)の改正で、窃盗や詐欺、殺人などのわざと犯した罪で拘禁刑(以前の懲役にあたる刑)になったときに、永住の資格を見直せるようになりました。

この仕組みは2027年4月から動き始め、資格を見直された人の多くは、期限つきの「定住者」という資格に切り替わります。

ところが国籍法には、いったん日本国籍を取った人について、あとから罪を犯したことを理由に国籍を取り消す決まりがありません。

永住者は資格を見直されるようになるのに、日本国籍を取った人は、あとで罪を犯しても国籍を見直されることがないんです。

1年以上前から聞こえていた怒鳴るような声

上の階の住人は、下の部屋から「誰かが一方的に怒っているような声」が、1年以上前から時々聞こえていたと話しています。

この住人は、その声を「外国の方が日本語を少しなまったような、イントネーションが独特なカタコトの怒鳴り声」だったとも話しています。

ただ、この住人は逮捕された女の顔を一度も見たことがなく、声の主を目で確かめたわけではありません。

近くで働く人も、夕方に帰るとき、誰かを一方的に怒鳴りつけるような女の人の声を、この夏から何度も聞いていたそうです。

上の階の住人が最後に大きな声を聞いたのは、8月下旬でした。

 

ただ、警察は2人のあいだのトラブルについて、相談を受けた記録を把握していなかったと報じられています。

この部屋は1人暮らし用として貸し出されていて、借りていたのは亡くなった女性でした。

1人暮らし用の部屋に、上の階の住人が一度も顔を見たことのない人が、もう1人いっしょに暮らしていたんです。

黙秘のまま捜査と裁判で問われること

女は今回の調べに対して黙秘しています。

傷害致死は、殺すつもりはなくても、暴行の末に相手を死なせてしまったときに問われる罪で、刑法では3年以上20年以下の拘禁刑と決められています。

傷害致死で起訴されれば、市民から選ばれた裁判員が裁判官と一緒に判断する裁判員裁判になり、8月30日に2人で部屋へ帰ってから110番までの4日余りに何があったのかを、裁判員が確かめていくことになります。

 

永住権目当てという筋書きは報道の事実とは合いませんでしたが、日本国籍を認めるときにも認めたあとにも、国はその人の考え方や価値観までは確かめていないということなのでしょう。