2026年10月14日の夕方、大阪の医誠会国際総合病院の10階病棟の看護師が撮ったとされる、入院中の患者さんを笑いものにした動画が、Xで一気に広がりました。

吸引を嫌がる高齢の患者さんのそばに「死ぬほんまにおもろい」、洗面台で髪を切られた姿に「サロン眉でかわいい」と文字を重ねた動画です。

もしベッドの上にいたのが自分の親だったらと思うと、とても冷静ではいられません。

しかも病院は、2026年7月の時点で、職員が個人のSNSに患者の個人情報を含む不適切な投稿をしていたと発表し、8月27日にはその「最終報」まで出していました。

それなのに、その最終報には、投稿した職員がクビになったのかどうかが一言も書かれていません。

流出した「10階病棟看護師」の動画

動画を一気に広げたのは、芸能人の私生活の暴露で知られるXのアカウント、DEATHDOL NOTE(デスドルノート)の投稿でした。

「10階病棟看護師」として流された動画は、インスタグラムのストーリー(24時間で消える投稿)の画面のまま出回っていて、病室の様子がそのまま映っていたとされています。

1本目は、ベッドに横たわる高齢の患者さんのそばでシーツを扱う場面で、「死ぬほんまにおもろい」「吸引嫌がって自分で出してっていったら面白い」という文字が重ねられていました。

吸引は、自分で痰(たん)を出せない人の喉や鼻に細い管を入れて吸い出す処置で、される側にとってはかなり苦しいもの。

 

2本目は、洗面台の前で患者さんの髪を切っている場面で、こちらには「プライバシーすぎるけどほんまにおもろい」「サロン眉でかわいい」という文字が添えられていました。

人に見せてはいけないと分かっている「プライバシーすぎるけど」の一言まで、撮った側は自分で書き添えていたのです。

夜の病棟の廊下の奥にナースステーションの明かりだけがともるイラスト

「死ぬほんまにおもろい」に寒気がする理由

いちばん寒気がするのは、映像に重ねられた「死ぬ」という一言です。

「面白すぎて死ぬ」のように笑いを大げさに言うときの口ぐせを、吸引を嫌がって苦しんでいる高齢の患者さんのすぐそばに書きこんでいたのです。

苦しくても、ベッドの上の患者さんは逃げることも、やめてと言い返すこともできません。

目の前の人が命を預けている患者さんだということが、撮っている側の頭からすっぽり抜け落ちていたとしか思えません。

 

もう1つの「サロン眉でかわいい」は、ほめ言葉の形をしています。

サロン眉は、眉のサロンで整えてもらったようなきれいな眉のことで、ふだんは友達のメイクをほめるときに使うような言葉。

それを、動画の中で切りそろえられた患者さんの前髪と眉に向けているのですから、ほめ言葉の形をした見下しです。

面会に来た家族が、親の前髪が眉の上でまっすぐそろえられているのを見て、それが病棟で笑いのネタにされていたと知ったら、どう思うでしょうか。

医誠会国際総合病院のプロフィール

医誠会国際総合病院
引用元:医誠会国際総合病院 公式サイト
  • 名前=医療法人医誠会 医誠会国際総合病院
  • 場所=大阪府大阪市北区南扇町(大阪駅から歩いて行ける扇町)
  • 開院=2023年10月(東淀川区の医誠会病院と城東区の城東中央病院が1つになった)
  • 規模=46診療科・病床は合わせて560床
  • 病院のうたい文句=救急搬送件数 全国第1位(2024年度の国の退院患者調査にもとづく、と病院が案内)

救急車の受け入れの多さを看板にしている病院なので、大阪の人にとっては「急に具合が悪くなったら運ばれるかもしれない病院」のひとつ。

救急車で運ばれるとき、患者や家族が病院を選ぶことはできません。

その「全国第1位」を病院がプレスリリースで発表したのは、2026年4月3日のことでした。

「断らない救急」で日本一だと病院が胸を張った、その年の7月12日に、職員がSNSに患者の情報を上げていたことが見つかったわけです。

病院は7月にお詫びを出していた

病院の公式サイトには、2026年7月13日付で「当院職員の不適切なSNS投稿について」というお知らせが載っています。

中身は、7月12日に職員の個人のSNSアカウントで「患者の個人情報を含む不適切な内容」が投稿されていたことが分かった、調べたうえで投稿した職員に「厳正なる処分を実施していく」、というものでした。

この時点では、どの病棟の誰が、どんな投稿をしたのかは一言も書かれていません。

 

10月に広まった動画が、この7月の件と同じものなのかどうか、病院はいまも口を閉ざしたまま。

ただ、8月の最終報では、7月の件は職員が非公開のアカウントに上げたものを、第三者が別のSNSへ転載して広まったとされています。

ストーリーの画面のまま出回った今回の動画と、広まり方はそっくりですよね。

鍵のマークがついたスマホの画面から写真が外へこぼれ出ていくイラスト

もし同じものなら、病院が最終報で「必要な対応を終えました」と書いた1か月半後に、同じ動画がもっと大きな規模で広がったわけです。

8月の最終報に処分の中身はなかった

7月のお詫びの続きとして2026年8月27日に出た「最終報」には、病院がやったこととして、次のことが並べられています。

  • 投稿した職員と、転載した第三者に削除を求め、元の投稿が消えたことを確認
  • 患者さんと家族へ、直接の説明とお詫び
  • 「重大な個人情報の漏えい」として、国の個人情報保護委員会へ報告
  • 就業規則にもとづいて、職員に「厳正に対処」
  • 院内で処分の事実を知らせ、全職員へSNSと個人情報の注意喚起

一通りやっているように見えますが、肝心の処分については「職員個人に関わる事項であるため、記載を差し控え」と書かれていて、解雇なのか、停職なのか、注意だけなのかが分かりません。

職員には院内で処分の事実を知らせているのに、外には中身を一言も出していないわけです。

 

しかも「個人情報保護委員会への報告」は、病院が自分で選んだ対応ではありません。

病歴のような情報がもれたら、人数に関係なく国へ報告しなければいけないと、個人情報保護法で決まっている手続きです。

肝心のクビかどうかは伏せたまま、決まりごとで項目の数だけをそろえた形です。

千葉西総合病院は2日で解雇を公表

Xで比べられているのが、ちょうど同じ10月に起きた、千葉県松戸市の千葉西総合病院(医療法人徳洲会の病院)の件です。

こちらは、2026年10月5日の夜勤中に看護師が患者さんを撮った動画が、Xに出回ったものでした。

病院が動画の存在を知ったのは10月8日の午後3時過ぎで、その日のうちに関わった看護師3人を自宅待機にして、ホームページでお詫びを出しています。

そして2日後の10月10日には懲戒委員会を開き、動画を撮った2人を解雇、見ていただけの1人を厳重注意にしたと、処分の中身まで公表しました。

医誠会国際総合病院と千葉西総合病院の、気づいた日・処分の中身・投稿先を並べた図

知ってから2日で、誰が何をしてどうなったかまで出した千葉西を見たあとでは、7月の件で3か月たっても処分の中身を出さない医誠会の対応は、何かを伏せているように見えても仕方がありませんよね。

今年だけで4つの病院で患者がさらされた

入院している患者さんの姿や情報が、病院のスタッフの手でSNSに上げられる件は、2026年に入ってから次々と起きています。

  • 2026年3月 佐田病院の看護師が、限定公開の機能で患者のカルテ画像を投稿(3月22日、第三者のまとめ投稿で病院が把握)
  • 2026年4月 武蔵野徳洲会病院が、職員の投稿した動画に患者の個人情報が含まれていたと発表
  • 2026年7月 医誠会国際総合病院で、職員の非公開アカウントへの投稿が発覚
  • 2026年10月 千葉西総合病院で、夜勤中に撮った動画がXに出回る

病院ごとに見れば「一部の職員」のしたことでも、患者の側から見れば、半年あまりで4つの病院です。

この動画を見て、抗がん剤の副作用で苦しんでいたときに、看護師2人に目の前で大笑いされたことを思い出したという人もいて、表に出ていないだけで、笑われた側はずっといたのかもしれません。

勝手に髪を切るのは罪にならないのか

「明らかな法律違反」「傷害罪になり得る」「行政処分でもいいかも」と、怒りの声は、病院の処分だけでは足りないというところまで来ていますよね。

髪のことでは、理容師法で、理容師の免許がない人は髪を切ることを「業として」行えないと決められています。

厚生労働省の説明では、お金をもらわなくても、くり返し続けて行えば「業として」にあたります。

 

入院していて床屋さんへ行けない人のためには、理容師が病室まで出向く「出張理容」という仕組みもあり、入院中の散髪は、本来は免許を持った人に任せるものです。

しかも、患者さん本人がその髪型を望んだのかどうかは、動画からはまったく見えません。

本人の同意なく人の髪を切る行為は、1912年(明治45年)の大審院(いまの最高裁判所にあたる裁判所)の判決で、暴行罪にあたるとされています。

看護師と病院はこの先どうなるのか

この件でいちばん怖いのは、病院をクビになっても、看護師の仕事そのものは続けられてしまうかもしれないことです。

看護師には、病院の処分とは別に、国が免許そのものに処分を出す仕組みがあります。

保健師助産師看護師法では、看護師が「品位を損するような行為」をしたとき、厚生労働大臣が国の審議会(医道審議会)の意見を聞いたうえで、戒告(いましめ)、3年以内の業務停止、免許の取り消しのどれかを命じられると決められています。

患者を撮った看護師に起こりうる、病院の処分・国の免許の処分・患者からの損害賠償の3つを並べた図

ただ、厚生労働省の審議会がこれまで免許の処分を決めてきたのは、窃盗や傷害などで刑が決まった人が中心です。

つまり、病院を解雇されても、国が処分を出さないかぎり看護師の免許はそのまま残り、別の病院でまた白衣を着ることができてしまうのです。

 

刑事の罰はどうかというと、看護師には法律で守秘義務があり、仕事で知った人の秘密を正当な理由なく漏らすと、6か月以下の拘禁刑(懲役と禁錮を1つにまとめた刑)か10万円以下の罰金です。

患者さんを笑いものにして、知らない人にまでさらした代償としては、あまりに軽いと言いたくなります。

しかもこの罪は、患者さんの側が告訴しなければ裁判にできない決まりです。

吸引を嫌がっても言い返せなかった患者さんに、自分で告訴するところまで求めるのは、あまりに酷な話です。

 

お金の面では、勝手に撮られてSNSに上げられた患者さんの側が、肖像権やプライバシーの侵害として、撮った本人に損害賠償を求めることもできます。

さらに民法には、働く人が仕事の中で他人に損害を与えたとき、雇っている側も賠償の責任を負う「使用者責任」という決まりがあり、病院で働いているという人からも、病院側も責任を問われるはずだという声が上がっています。

勤務中の病室で撮られた動画なら、看護師本人だけでなく病院も、患者さんへの賠償を求められる立場になりえます。

医誠会国際総合病院の評判と口コミ

2回入院したことがあるという人は、「看護師全員基本的にこんな感じ」「患者はほったらかしにしてるし、ずっとスマホさわってるイメージ」と書き、泣くまで罵倒されたことや、事前の説明がないまま望まない手術を受けたことまで訴えています。

同じ人は別のポストで、入院したときはまわりが高齢の患者ばかりで、この病院のひどさを外に伝えられなかったとも書いていました。

このポストが紹介している口コミの中には、夜中に階段から落ちて救急搬送された人が「看護師は不機嫌」「車椅子に移るときに手さえ貸してもらえません」と書いたものもあります。

 

病院の口コミサイトのCalooでも、2024年4月に90代の家族が救急搬送されたという人が、担当医の話し方が高圧的で説明がほとんどなく、医師に伝えた内容が看護師に伝わらずに同じことを聞き直された、と書いて5点中1点をつけています。

働く側の口コミサイト「エン カイシャの評判」でも、病院の総合評価は5点中2.9点。

あの動画を見たあとでは、どの口コミも本当のことにしか思えません。

親を入院させている家族の不安

いちばん落ち着かないのは、いま実際に家族をこの病院に預けている人たちです。

入院している親を心配してスマホを見つめる女性のイラスト

面会のときには丁寧に接してくれている看護師さんが、自分たちのいない夜にどんな顔をしているのかは、家族からは確かめようがないからです。

命を預けるというのは、自分では体を動かせない親を、家族の目が届かない夜まで丸ごと任せるということです。

処分の中身が出てこないうちは、面会に行くたびに、ナースステーションの前で「この人じゃないよね」と看護師さんの顔を見てしまう家族もいるはずです。

看護師はクビになったのか、その一言を病院が言わないかぎり、この動画は何度でも掘り起こされてしまうのではないでしょうか。