2026年10月21日、歌舞伎俳優の中村児太郎(32)が、知人女性への傷害容疑で警視庁に逮捕されていたことを、デイリー新潮(週刊新潮を出している新潮社のニュースサイト)が報じました。

児太郎は2025年の夏、妻への暴力が報じられて、舞台を降りていた人です。

それから1年余りで、今度は知人の女性に手をあげていたんです。

本人は取材に「許されるならば死んでお詫びしたい」と話していますが、この一言が、読んだ人の怒りにかえって火をつけています。

「歌舞伎役者が不祥事ばかり起こすのは環境とかに問題があるのか、それともサラブレッド(血統)なのか」と首をかしげる声も出ています。

人間国宝の孫・中村児太郎とは

  • 本名は中村優太、1993年12月23日生まれの32歳(屋号は成駒屋=歌舞伎役者の家の呼び名)
  • 祖父は人間国宝の七代目中村芝翫、父は九代目中村福助
  • 2000年9月、6歳で歌舞伎座の『京鹿子娘道成寺』に出て初舞台、同時に六代目中村児太郎を名乗る
  • 女方(女性の役を演じる男性の役者)として、『金閣寺』の雪姫のような大きな役も任されてきた
  • 国立劇場の奨励賞を4回受賞するなど、若手の女方として期待されてきた

この家柄から、「歌舞伎界のサラブレッド」と呼ばれてきました。

2013年9月には、父の福助が七代目中村歌右衛門を、児太郎が十代目中村福助を継ぐことが一緒に発表されています。

父が成駒屋でいちばん大きな歌右衛門の名を継ぎ、空いた福助の名を19歳の児太郎が継ぐ。成駒屋の次の代まで、このとき決まっていたんです。

ところが同じ年の11月、父の福助が脳内出血で倒れて舞台を降り、2人の襲名は今も止まったまま。

福助は2018年9月に舞台へ戻りましたが、今回の電話取材で児太郎が話したところでは、父は倒れてから失語症を患い、思うように言葉を出せないでいるそうです。

 

「児太郎」という名前そのものにも、成駒屋ならではのいわれがあります。

初代も三代目も、児太郎から始まって、のちに歌右衛門まで上りつめていて、児太郎は、いずれ歌右衛門を継ぐ役者が最初に名乗ってきた名前です。

その名前を背負って、児太郎が女方として演じてきた大役のひとつが『金閣寺』の雪姫。

父の仇の男に、桜の木へ縄で縛りつけられる姫です。

舞台では男に縛られる女性を演じてきた人が、家では妻に手をあげていたと報じられているんです。

2025年に報じられた妻へのDV

2025年6月、週刊新潮が、児太郎が2021年1月に入籍した妻に暴力をふるっていたと報じました。

報道によると、2021年11月、2人は食事の帰りのタクシーの中で口論になり、児太郎は妻の髪をつかみ、車を降りた妻を倒して、顔を地面に押し付けたといいます。

目撃した人の通報で警察官が駆けつけましたが、児太郎は「こいつは酔っ払っているだけだから、大丈夫」と話し、そのまま2人で家へ帰されて、警察の対応はそれで終わってしまいました。

 

家に入って妻が「離婚したい」と口にすると、児太郎は妻に馬乗りになり、顔が血だらけになるまで殴り続けたと報じられています。

そのとき妻にかけた言葉は、「お前は黙ってればいいんだよ」。

救急車は呼ばれず、妻が「実家に連れて行って」と頼み、児太郎も一緒にタクシーで妻の実家へ向かったそうです。

 

真夜中に実家へ駆け込んできた娘の姿を、妻の母は「靴も履かず、靴下も片方は脱げた状態」「顔は腫れ上がっていて、洋服は血だらけ」だったと話しています。

その母が「あなた、何をしたの?」と問いただすと、児太郎は両手を広げて「僕は何もしてません」と言い、続けて、妻のほうが「勝手に家の壁に頭をぶつけた」のだと言い出したそうです。

医師の診断は、顔の骨の骨折に、首のねんざ(頚椎捻挫)、体のあちこちの打撲でした。

妻は今も心の傷(PTSD)に苦しんでいると伝えられています。

 

報道からおよそ2週間後、児太郎は事務所を通じて「皆様に多大なご心配とご迷惑をお掛けしておりますことを心からお詫び申し上げます」と謝りました。

ただ、記事の中身については「私の認識と食い違うところが多々あります」と書き添えていて、謝った相手も「ファンの皆様、関係者の皆様」でした。

この声明には「誰に向かって心からお詫びしてるの??」「お詫びしなければならない人に謝れば良いんじゃない」という声が寄せられました。

同じ日に、歌舞伎の公演を手がける松竹が、児太郎は歌舞伎座の『七月大歌舞伎』を休演すると発表しています。

歌舞伎町のホテルで知人女性に振るった暴行

2026年10月3日の明け方、事件は新宿・歌舞伎町にある、1泊およそ4万円の高級ホテルの一室で起きました。

デイリー新潮が伝えた警視庁関係者の話では、26歳の女性が顔をわしづかみにされ、平手打ちをされたり、引っかかれたりしたそうです。

女性は警察に被害届を出し、10月5日、児太郎は傷害容疑で逮捕されました。

逃げたり証拠を隠したりするおそれはないとして、翌日には釈放されています。

今は警察が本人を呼んで話を聞きながら、捜査を進めているところです。

 

相手の女性とは数か月前に知り合ったそうで、本人いわく「私の弱さから精神的に頼ってしまう関係」。

何があったのかについて、児太郎は「ホテルの室内で酒を飲んだ状態で痴話喧嘩になってしまい、つい手を出してしまった」と説明しました。

顔をわしづかみにして平手で打ったことを、本人は「つい」と言い表しています。

本人は今回の取材で、「昨年のスキャンダル報道後、自分を見つめ直し、復帰を目指してやって参りました」と話しています。

妻とはまだ離婚の話し合いが続いていて、2026年3月には、児太郎側が「1億3800万円の借金があり慰謝料を支払えない」と主張していると報じられていました。

「死んでお詫びしたい」が響かない理由

電話での取材に、児太郎は「逮捕されたのは事実であり、言い逃れはできません」と話し、続けてこう語っています。

「母からは『死にたい』と言われました」「どう責任を取ればいいか、本当に自分でもわからない。許されるならば死んでお詫びしたいと考えてしまう」

この言葉に、ネットには「『許されるなら』って、許されることを前提にした戯言」「絶対死なないやつ」「許されないし死なれても困る無責任すぎる」という声が並びました。

取材で児太郎がまず謝ったのは「歌舞伎界の皆様ならびにファンの皆様」で、次に両親の話になり、手をあげた女性へのお詫びが出てくるのは、いちばん最後です。

そこでも口にしたのは「被害女性に誠心誠意お詫びし、弁護士を通じて示談交渉を進めているところです」という示談(お金を払うなどして、相手と話をつけること)の話で、痛い思いをした女性が今どうしているのかには、ひとことも触れていません。

 

振り返ると、児太郎の言葉はいつも、自分のしたことを小さく言い表す形をしています。

警察には「こいつは酔っ払っているだけだから、大丈夫」、妻の母には「勝手に家の壁に頭をぶつけた」、世間には「私の認識と食い違う」。

逮捕されて「言い逃れはできません」と口にした今回でさえ、出てきたのは「痴話喧嘩」と「つい」でした。

「死んでお詫びしたい」と言っても、死ぬかどうかを決めるのは謝る側の児太郎自身です。

殴られた女性が何をしてもらえば少しでも気持ちが収まるのか、そこには何も答えていないんです。

歌舞伎役者の不祥事が続く理由

ネットには「他の連中は不倫や隠し子に暴力事件、ホステスへの非行。すげえなマジで」と書く人もいて、ここ20年ほどを振り返るだけでも、歌舞伎役者たちはこんなふうに何度も不祥事を起こしています。

  • 2006年7月、中村獅童が酒気帯び運転と信号無視で検挙
  • 2016年9月、中村橋之助(現・八代目芝翫)が襲名の直前に京都の芸妓との不倫を報じられ、会見で謝罪。翌月、予定どおり芝翫を襲名
  • 2022年8月、香川照之(歌舞伎では市川中車)が銀座のクラブでの性加害を報じられ、テレビ番組を相次いで降板。同年12月には歌舞伎の舞台へ
  • 2023年5月、市川猿之助が共演者やスタッフへのハラスメント疑惑を報じられた日に、両親が亡くなり本人だけが助かる事件。11月に、両親の自殺を手助けした罪で有罪判決
  • 2026年1月、中村鶴松が飲食店のドアを蹴って壊し現行犯逮捕。3月に不起訴となり、10月の公演で舞台へ復帰

このうち八代目芝翫は、児太郎の父・福助の弟で、児太郎から見れば叔父にあたります。

お酒の席、女性、立場の弱い相手。歌舞伎役者の騒ぎは、数年おきに、このどれかがからんで起きています。

しかも、中車も鶴松も、1年たたないうちに舞台の上。

鶴松は店との示談がまとまって不起訴になっていて、児太郎も今、弁護士を通じて女性と示談の話を進めています。

ネットに「時間置いたらしれっと復帰」という声が出てくるのも、無理はないんですよね。

「未だに芸の肥やしとか言って容認されてるんだよな」という声にも、うなずけるわけがあります。芸の肥やしは、女遊びも芸を磨く肥やしになる、という言い分のことです。

2016年に叔父の芝翫(当時は橋之助)の不倫が報じられたとき、妻の三田寛子は記者に芸の肥やしかと聞かれて、「ウチでは芸の肥やしはあり得ません」と言い切っています。

それでも芝翫の不倫は、2021年から2022年にかけても、くり返し報じられました。

妻の三田寛子が「あり得ません」と言い切った家で、同じことが何度も起きていたんです。

「今回の知人女性への暴行傷害沙汰も必ず不起訴でしょうね」と見る人もいて、実際に示談がまとまれば、不起訴(裁判にかけずに終わること)になることはあります。

鶴松がそうだったように、そのあと何か月かで舞台に戻ってきた役者も、この世界にはもういます。

男だけの舞台と守られてきた御曹司

女性が舞台に立てない歌舞伎の世界では、役者の妻は「梨園(歌舞伎の世界のこと)の妻」として、ご贔屓(ひいき筋と呼ばれる、長く支えてくれるお客さん)へのあいさつなどを受け持つ裏方になります。

梨園の妻どうしの序列も、夫の役者としての序列で決まるとされています。

児太郎自身、2022年5月のインタビューで「歌舞伎界は男尊女卑ですよ(笑)」と話していました。

歌舞伎で演じる昔の時代の話として言ったものだと伝えられていますが、この言葉の半年ほど前に、児太郎は妻に暴力をふるっていたと報じられているわけです。

 

報道によると、その言葉を口にしていたころ、児太郎の妻は、梨園の妻として表に立つことさえなく、結婚そのものが伏せられていました。

そして、2021年11月の妻への暴力が週刊新潮で報じられたのは、3年半以上たった2025年6月のことです。

そのあいだに児太郎は舞台に立ち続け、2024年2月には松尾芸能賞の新人賞まで。

 

2025年の報道のあと、松竹は「引き続き弊社として独自の調査を行ってまいります」とコメントしていました。

それでも2026年3月には、同じ年の『七月大歌舞伎』で児太郎を復帰させる動きがあると、関係者の話として報じられていました(結局、舞台には戻らないまま、今回の逮捕を迎えています)。

今回の逮捕のあとでさえ、ファンの中には、前回の妻への暴力について「事件化せずに何とか納めてもらいたいと思っていました」と書く人がいました。

家の中でふるわれた暴力は、誰にも知られないまま何年もたってしまうことがあります。同じように身近な人からの暴力に苦しんでいる人には、相談できる窓口があります。

  • DV相談ナビ=電話で「#8008」にかけると、近くの相談窓口につながる
  • DV相談+(プラス)「0120-279-889」=電話は24時間、チャットは昼から夜まで(12時〜22時)相談できる

宙に浮いた歌右衛門と福助の名跡

児太郎は取材に「今回の事件で二度と舞台に立てなくなったと思っています」と話しました。

父が継ぐはずだった歌右衛門の名も、児太郎が継ぐはずだった福助の名も、2013年から止まったまま、誰が継ぐのか分からなくなっています。

歌舞伎ファンのあいだでは、児太郎がどうなるかより、成駒屋の名前をどうするかを案じる声も出ています。

歌舞伎役者にDVが多いと言われてしまうのは、女性を傷つけた話が出ても、名前と舞台のほうが先に守られてきた世界を、何度も見せられてきたからなんですよね。