ちいかわ映画の入場者特典が配られるたび、何人がかりでも在庫を数え直す。

そういう売り場が、ある騒ぎのあとに出てきました。

疑われたのは東京の1館です。

そこと関係のない映画館にまで、数え直しの当番が増えました。

 

きっかけは、入場者特典の第4弾のチャームが配られた翌日、2026年9月6日にXに並んだ声です。

家族全員がヒトハとフタバだった。

まわりを見ても人魚コンビばかりで、大本命のセイレーンが1つも出ない。

帰りに声をかけて数えたら、20人中16人がその2種類だった、と。

「スタッフが当たりを抜いてるのでは?」

くら寿司のちいかわコラボが従業員の不正で止まった直後でしたから、疑うなというほうが無理でしょう。

9月15日、その東京の1館が調査の結果を出しました。

数は合っていた、というのがその中身です。

そして2026年10月10日、第6弾のチャームが配られると、同じ疑いの声がまた上がり始めます。

今度は「ちいかわとハチワレしか出ない」と「うさぎとモモンガしか出ない」が、劇場ごとに逆向きに。


騒ぎと関係ない映画館まで巻き込まれた

調査の結果が出た日の夕方、別のシネコンで働く人がこう書いていました。

1回の上映ごとに、複数人で何度も何度も在庫数を数える。

今回の件があってから、勤務先ではそういう決まりになったそうです。

緊張感を抱えて働くことになるのは腹が立つ。

そう書いたすぐあとが、こうでした。

毎回きちんと数が合うので、みんなでハイタッチしている。

青春してます、ありがとう。

疑いが向いたのは、東京の1館でした。

数え直しの当番が回ってきたのは、そこと関係のない別の売り場です。

返信欄には「真面目にやってる人たちに感謝」「余計な騒動で手間が増えるのは困りもの」という言葉が並びました。

では、その「今回の件」とは何だったのか。


数は合っていたと会社が出した

2026年9月15日の午後3時、グランドシネマサンシャイン池袋が調査の結果を出しました。

題は「入場者特典に関するSNS投稿についての社内調査の途中経過報告」。

運営する佐々木興業株式会社の名前で出された文書です。

調べ方は、「納品数から在庫数を引いた実数」が実際に配った数とそろうかどうかを見るやり方でした。

 

劇場内の在庫を数え直した結果、帳簿と「完全一致」したことになります。

だから「当社が管理する入場者特典が不正に流出したことを裏付ける事実は確認されておりません」。

そしてもう一行、短い否定が入っていました。

当社と投稿者又はその関係者とのやりとりも存在しません。

否定されたのは、映画館の側から「大目に見る代わりにもう何も言うな」と持ちかけられたという投稿主の話です。

「内密の示談交渉など一切ない」と完全否定したことになります。

会社は弁護士を通じて、投稿した人を特定するための発信者情報開示請求を進めていると書いていますから、調査はまだ終わっていません。

投稿の側が事実でなかったのなら、名前を出された映画館と、そこで働く人たちは、1週間ずっと疑われていたことになります。

「盗難の潔白」と「手渡し時の偏り」は別の問題です。


20人中16人がヒトハかフタバだった

入場ゲートを通る際、1人につき1個だけ手渡される全4種になります。

ファンが一番狙っている「大本命」が、セイレーンです。

映画の主役級キャラクターで、今回が初のグッズ化でした。

ヒトハとフタバも初登場です。

この2人はいつも一緒に扱われるキャラですが、フィギュアは別々に1つずつあります。

つまり4種類のうち2つが、このコンビで埋まっている形です。

ヒトハとフタバが8割を占め、セイレーンはゼロでした。

 

均等アソートなら、20人いればセイレーンは5人出るはずです。

ひとりも出ない確率は、ざっと0.3%ほど。

「これ絶対に仕組まれてるでしょ」と疑うには十分な偏りです。

そして確率の偏り以上に効いたのが、「配る前に、店員さんが袋を触っていた」という目撃談でした。

外袋をもみもみ触って目当てを引き当てるこの小細工は、グッズ集めの世界で「サーチ」と呼ばれています。

あるお母さんは、中学1年の息子さんが「セイレーンちゃんがほしい」と言って、家族全員分のチケット代を自分のお小遣いから払ったと書いていました。

「せっかくの好意が丸かぶり」という切ない結末です。

「揉んで、何個か避けていた」。

「店員がサーチしたのでは」という疑いの火種です。

「一度つかんだ袋を戻して、別のを渡された」という似た報告も、そのあと次々に出てきました。


疑いの土台はくら寿司にある

この騒ぎが起きたのは、回転寿司の騒動のすぐあとです。

2026年9月5日、くら寿司がちいかわとのコラボを打ち切りました。

景品がフリマサイトに大量に出ていることを受けて社内調査をしたところ、ひとつの店舗で従業員による不正が見つかった、というのが理由です。

20人の話が出はじめる、ちょうど前日。

この件の経緯はくら寿司×ちいかわ炎上|犯人特定から賠償請求までを解説にまとめています。

しかも景品をめぐる不正が実際に起きたばかりだったのは、同じちいかわのグッズです。

 

だから映画館の話を聞いたとき、多くの人が反射的に「またか」と思いました。

「また横流しか」と身構えた客を責められません。

ただ、その飛び火を正面から受けている人たちもいました。


メルカリでいちばん多いのは島二郎

スタッフの横領なら、フリマに出品されるはずです。

売るために抜くのですから。

ところが、メルカリの新着を22件ぶん並べてみると、様子が違いました。

  • 島二郎 7件
  • セイレーン 6件
  • フタバ 6件
  • ヒトハ 3件

セイレーンだけが目立って多い、という偏りはありません。

しかもいちばん多いのは、セイレーンですらなく島二郎でした。

値段は単品で2,500円から4,000円あたり。

無料のオマケが、鑑賞券以上の高値で取引されています。

この価格の付き方についてはくら寿司ちいかわのフィギュア転売疑惑の闇についてでも触れました。

もちろん、「セイレーンだけを大量に出している人がいる」という声もあります。

「特定の転売ヤーによるセイレーンの買い占め」を疑う声です。

セイレーンで絞って、売り切れた分まで含めた21件。

そのうち複数個をまとめた出品が4件ありましたが、中身は全部ばらばらの組み合わせです。

「セイレーンばかり何十個も出す業者」はいませんでした。

「自力で周回したファンが重複分を出品した」自然な状態です。

 

もちろん、見えているのは新着の21件にすぎません。

それでも、「セイレーンだけがフリマに山積みになっている」という状態にはなっていない。

答えは、たぶん売られていないところにあります。

Xでセイレーンの名前を追いかけると、同じ形の投稿が延々と流れてきました。

  • 譲)フタバ 求)セイレーン
  • 譲)島二郎 求)セイレーン
  • 譲)第1弾ハチワレ 求)セイレーン

45件のうち28件がセイレーンを「求む」側で、譲るほうに回っているのは5件しかありません。

転売目的の金銭取引ではなく、「純粋なファン同士の物々交換」です。

お金にしていないんですね。

フリマに出す間もなく、ファン同士の交換で消えます。


厚みの差はキャラの差ではなかった

袋を触っていたという目撃にも、いちばん腑に落ちる指摘が付いていました。

「ペアで観に行ったファン」からの納得の報告です。

渡された袋を触ったら、片方は薄くて、片方は厚かった。

「感触が違うから別キャラだ!」と期待したら、同じフタバでした。

 

厚みの差はどこから来ていたのか。

「グッズが袋の中で寝ているか立っているか」、それだけの違いでした。

しかも中身は厚紙で挟まれています。

指先の違和感は、キャラ差ではなく「台紙の向き」でした。

「触ると厚みが違う」という感覚そのものは、間違っていません。

実際に違うのですから。

ただ、触った指が拾っていたのは、袋の中で中身がどちらを向いているかという差だけでした。


箱の中で最初から混ざっていない

では、あの20人はどうして偏ったのでしょうか。

映画館で働く人が、こう書いていました。

「最初から同一キャラがまとまって納品されていた」という指摘です。

メーカーから届く段ボール内で、同キャラが固まっているとのことでした。

そこから順番に取って渡していけば、列に並んだ人が続けて同じものを受け取ります。

 

これなら、あちこちで食い違っていた話がひとつに収まるはずです。

家族全員が同じだったのも、まわりを見渡して同じだったのも、隣の回では普通にセイレーンが出ていたのも。

「スタッフの作為」ではなく「工場の箱詰め」です。

もうひとつ、作られた数そのものが違うのではという見方もあります。

ヒトハとフタバは小さくて軽い作りです。

セイレーンや島二郎のほうが立体的で、材料も手間もかかります。

小さいほうを多めに作っていても、おかしくはありません。

 

封入比率はブラックボックスで、外からは確かめられないままです。

公式の告知にも、4キャラが均等に1対1で入っている、とは書かれていません。

「ランダム」とだけ書いてあって、比率については一言も触れていないのです。

そうなると、さきほどの0.3%も揺らぎます。

あれは、4種類が同じ数だという仮定の上に乗った数字。

コラボが途中で終わってしまったくら寿司のときも、結局いちばん知りたい数字は最後まで出ませんでした。

そのあたりはくら寿司のちいかわコラボが突然終了した本当の理由に書いています。

 

映画の公式サイトには、もうひとつこんな一文も入っていました。

「配布数、残数等の詳細に関する劇場へのお問い合わせは、ご遠慮ください」

だから外からは、棚に何が何個あるのか最後まで見えません。

バックヤードは見えなくても、「手渡しの現場」は見えています。

数えられるのは、そこだけでした。

「混ざっていない箱」と「非公開の比率」です。

そしてこの2つが見えないあいだに、疑いは1つの映画館の名前へ向かいます。


池袋の館が弁護士に相談した日

池袋の劇場が巻き込まれたのは、SNSの「ある告発ポスト」です。

グランドシネマサンシャイン池袋で働いている恋人から特典をもらっている、という趣旨のものでした。

客へ渡すはずのものが身内へ回っているのではないか、と読まれたわけです。

この投稿をめぐって問い合わせが相次ぎ、9月9日の午前10時17分、劇場が公式のXへ文書を出しました。

書いてあったのは、次の2つになります。

  • 内容の事実関係を確認中で、法的観点からの検討のため弁護士へ相談している
  • 事実だと確認されたら厳正に対処し、事実に反していたら法的措置を含む対応をする

どこの館のこととも言えなかった疑いが、1館の名前つきで表に出た日でした。

映画館の声明は、「犯人」と「デマの拡散者」の双方に向けた警告です。

抜いた人が本当にいたなら、その人が処分されます。

デマなら、噂を拡散した側が訴えられる側になるわけです。

投稿を書いた人は9月8日の夜に「嘘ではない」と反論していました。

 

ただ、疑いに名前が付いた瞬間から、確かめられないことの重さが変わります。

映画館の看板やスタッフ、その恋人という「具体的な個人」です。

個人名まで特定されると、誤爆したときの代償が跳ね上がります。

「真偽不明のまま店名が晒される」のは辛いところです。

9月9日のお昼すぎ、発端になった投稿の主が、更新をここで終わりにすると書きました。

映画館の側から恋人へ「今回の件は大目に見る代わりにもう何も言うな」と打診があった。

だからポストの更新はこれで最後になります。

心配と迷惑をかけて申し訳ありませんでした。

 

劇場が文書を出したのが、同じ日の午前10時17分。

投稿主が「これで最後」と書いたのが、午後0時52分。

あいだは2時間35分しかありません。

 

法的措置を予告した直後に、「裏で手打ちを提案する」不自然さです。

この2つは正面からぶつかります。

同じ点を指摘している人がいました。

この不自然さは、6日後の調査報告で会社の側からも否定されます。

やりとりそのものが無かった、というのが会社の答えです。


次の特典は触っても分からない

ここまでの騒ぎの芯にあったのは、袋の上から中身が分かってしまうことでした。

セイレーンだけ厚みがある。だから、触れば選べる。

入場者特典の第5弾が、9月14日に発表されています。

9月19日の土曜日から配られたのは「ひみつ本」という冊子です。

ブラインド商法とは違って、絵柄は1種類だけになります。

袋を揉んで選別する余地は、もう一切ありません。

サーチという言い方そのものが、いらなくなるはずです。

ただし「劇場ごとに数に限りがございます」という一行は、今回も付いています。

何個届いて、何個配って、何個残ったのか。

その数字を持っているのは、今度も配る側だけになります。

けれど10月10日の第6弾で、袋を開けるまで中身が分からない特典が戻ってきました。


第6弾は配る前からフリマに出ていた

10月10日から配られた第6弾のチャームは、ちいかわとハチワレの組と、うさぎとモモンガの組の2つです。

袋の中がどちらなのかは、受け取って開けてみるまで分かりません。

配り方は第4弾と同じで、入場するときに1人1個。

その配布が始まる前の日、10月9日の夜には、もうフリマに第6弾が並んでいると知らせる投稿が出ていました。

貼られた画面を見ると、出品の写真は公式が告知に使った画像で、品物そのものを撮ったものではありません。

メルカリの決まりでは、出品する時点で手元にない商品を売ることは禁止。

 

配布が始まった10日の夕方には、袋に入った実物の写真の出品と、その相場まで出回りました。

今回は、10日のうちに配り終える劇場が出るかもしれないと、公式が前もって知らせるほど数の少ない特典。

数を絞った理由は書かれていないので、映画館の関係者が横流ししていたから絞ったのでは、と疑う声まで出ています。

第4弾のときも「前日出品」を見たという声が出ていたので、1か月たって、また配る前に品が出回り、また数が足りないとなれば、映画館を疑う気持ちが戻ってくるのも無理はありません。

 

配る前から品が出回って見えるとき、考えられる道は3つあります。

  • 手元にない品を先に出す無在庫の出品
  • 何度も入り直したり、人数分の席を取ったりして集めた品
  • 配る側からの持ち出し

前の日の出品が公式の画像だけで、当日になって実物の写真に変わったのは、1つ目の先出しによく合う形。

完売のはずの初日の朝の回で、後ろの列の8席が最後まで空いていた、という人もいて、特典だけ受け取って帰ったのでは、と2つ目を疑う声も出ています。

それでも、3つ目がなかったと言える材料は、まだどこからも出ていません。


ちいハチばかりの館とうさモモばかりの館

10日の昼前から、Xには「ちいかわとハチワレしか出ない」という声が上がり始めました。

うさぎとモモンガが出なくて、映画のあとに「出ましたか?交換しませんか」と囲まれた、という人も。

ところが同じ日の昼、まったく逆の結果を書いた人もいます。

みんなうさぎとモモンガだったという劇場で観た人は、段ボールが2つあって、キャラで分けてあったのではと書いていました。

足りないほうが、劇場によって逆になっているのです。

 

2種類のランダムなら、4人で行って4つとも同じほうになるのは8回に1回ほどで、それだけなら珍しくありません。

ただ、交換を探している人までみんな同じほうだった、という声は、くじの運だけでは説明しにくいところ。

第4弾のときに映画館で働く人が書いていた、最初から同じキャラがまとまって届くという話なら、続けて並んだ家族や友だちが同じほうを受け取り、別の劇場では逆のことが起きます。

いっぽうで、相場はうさぎとモモンガのほうが高いので、ちいかわとハチワレばかりの劇場では高いほうが抜かれたのでは、と読む人がいてもおかしくはありません。

それでも、うさぎとモモンガばかり出た劇場まであるのは、抜き取りだけでは説明がつきにくい形です。

 

公式が出しているのは全2種のランダムという一言だけで、箱にどう詰めて、どちらを何個作ったのかは、第4弾のときと同じく外からは分かりません。

箱の偏りで当日の「出ない」は説明できても、配る前の日にフリマに並んだ出品までは説明できないままです。

そして今度も、疑いの目が向くのは、入口で袋を手渡している人たちでした。


疑われた側がいちばん数えていた

第4弾の騒ぎで、いちばん割を食ったのは誰だったのか。

数を抜いたと疑われた側は、もともと数える側です。

騒ぎの最中にも、映画館で働く人の投稿が出ていました。

お客さんから「くら寿司と同じことをしているだろう」と電話で言われた、というところから始まる文章です。

書かれていたことを並べると、こうでした。

  • うちの店は何もしていない
  • 届いた時点で、中身がどう振り分けられているか知らない
  • 封が開いているものがあれば、それは配布していない
  • お客さんが入りきったら毎回数えていて、ズレたら合うまで数え直す

数が1個でもズレたら、全員で棚卸しのやり直しになります。

スタッフのモラル以前に、「残業したくない」という現実論。

それでも同じ趣旨の目撃は、いくつも上がっています。

「疑われるだけで泣きたくなる」と嘆いていました。

「真面目に働いている現場の身にもなって」という悲痛な訴えです。

その人たちが、名前の出た館とは縁もゆかりもない売り場で、いまは1回の上映ごとに何人がかりでも数えています。

それでも、数が合うたびにハイタッチが起きているそうです。

腹は立つ、と書いたその同じ人が、青春してます、と続けていました。

疑った側が責められる筋合いもありません。

回転寿司では実際に不正が出ましたし、グッズの厚みが違うことも本当で、箱の中身が混ざっていないという現場の声もありました。

第4弾でも第6弾でも疑いが消えないのは、何個届いて、どう詰められていたのかを、最後まで見せてもらえないからなんですよね。