2025年7月、KENZOは自分のYouTubeで、半月で230件もの詐欺の被害相談が届いていると明かしていました。

詐欺に遭った人たちが、登録者100万人を超える1人のYouTuberに助けを求めていたのです。

2026年10月14日、そのKENZOが名誉毀損の疑いで京都府警に逮捕されました。

それでも、マルチ商法や詐欺の現場に向かい、だまされかけた人を引き戻してきた動画まで、逮捕の一報で消えるわけではありません。

 

KENZOがここまで頼られてきたのは、子どものころの暮らしと、自分もだまされた過去があったからなんです。

探偵事務所を作るほど届いた相談

KENZOは2025年7月14日に、探偵事務所の設立を自分のYouTubeで発表しました。

設立の理由は、動画の取材だけでは手が回らないほど、被害相談が届いていたからでした。

詐欺師の居場所が分からない相談には、KENZOだけではお金も時間も人手も足りず、応えきれなかったと説明しています。

相談した人からすれば、KENZOは話を聞いてくれるだけでなく、実際に相手のもとへ行って、カメラの前で問いただしてくれる人だったんです。

逮捕の4日前の2026年10月10日にも、KENZOは自分のXで、ある投資話の被害者について「ほとんどの被害者は、被害届も受理されず泣き寝入り状態」と書いています。

 

被害届さえ受け取ってもらえない人の相談が、KENZOのところへ集まっていたんです。

KENZOの生い立ちと児童養護施設

新宿109 KENZOのYouTubeチャンネルのアイコン
画像の出典:新宿109 KENZOのYouTube(@kenzo1093)
  • 名前=KENZO(本名は報道によると池田実貴)
  • 年齢=28歳
  • 育った場所=10歳から三重県津市の児童養護施設
  • YouTube=チャンネル名「新宿109」(登録者103万人)
  • 本=『突撃!新宿109 詐欺・悪徳マルチ撲滅活動日記』(彩図社)

KENZOは、母と姉との3人家族で育ちました。

著書によると、母は貧血とうつ病で思うように働けず、家は生活保護を受けていて、ごはんはべっこう飴や食パンの耳で作ったラスクが中心だったといいます。

 

小学4年、10歳のときに、姉と一緒に三重県津市の児童養護施設へ入ることになりました。

施設へ向かう直前に会いに来た母から「一緒に暮らせなくなった」と告げられたことも、本人が書き残しています。

60万円をだまし取られた側だった

KENZO自身も、詐欺でお金を失ったことがあります。

著書によると、友人の紹介で名古屋・栄のカフェで同い年の男性と会い、ハワイの不動産を共同で買えば家賃収入で稼げるという話を持ちかけられます。

その日のうちに銀行でアルバイトで貯めた60万円を下ろし、手渡してしまいました。

 

本人いわく、お金を出してしまった決め手は「ココまで話を聞いて断るのはダサい」という気持ちだったそうです。

儲け話そのものより、断れない空気やプライドを突いてくる手口があることを、KENZOは自分のお金で思い知りました。

マルチ商法が「捕まらない」と感じる理由

マルチ商法で人を誘う側がなかなか捕まらないのは、法律の上で捕まえにくい売り方だからです。

マルチ商法(商品を買った人が、次の買い手を誘うとお金が入る売り方)は、それ自体は法律で禁止されていません。

勧誘だと隠して呼び出す、うそを言うといった違反があっても、それを示すには、勧誘の場で何を言われたかの証拠が要ります。

 

国民生活センターには、マルチ取引の相談だけで毎年4,000件を超えて寄せられています(2025年度は4,003件)。

友人に勧められた副業、知人に誘われた健康食品のセミナー、マッチングアプリで知り合った相手に連れて行かれた説明会など、きっかけはどれも人からの誘いです。

KENZOは、セミナー会場や事務所に出向き、勧誘の手口をその場で撮って世間に見せました。

法律の手続きでは「これはおかしい」と認められるまでに時間がかかりますが、動画なら、登録者103万人のチャンネルを通して一度に大勢へ届きます。

だまされかけている人が、自分の受けている勧誘と同じだと気づけるきっかけにもなっていたのです。

 

しかも、動画を見て契約をやめた人は、被害者として数字に出てきません。

2024年3月、KENZOは自分のXにこう書いています。

報道が取り上げないうえに、守られた人は記録にも残らないので、KENZOのおかげで助かった人の話は、なかなか表に出てこないんですよね。

失敗も本に書いて続けた突撃

2023年11月、街で人を問い詰める動画を出していた〈私人逮捕系〉と呼ばれるYouTuberが相次いで逮捕され、KENZOも一度、活動を終えるような投稿をしています。

ところが翌日には、こう書き直しました。

実際、KENZOはそのあとも突撃を続けています。

 

著書では、自分の失敗も隠さずに明かしました。

ある詐欺師への突撃を「俺の勇み足な面もあった」と振り返り、「突撃にあたっては、本来、入念な下調べが欠かせない」と書いています。

2025年3月の日刊SPA!のインタビューでも、法律や判例を学び、相手の言い分も聞いて、正義を押しつけないよう心がけていると語っていました。

失敗を隠さずにやり方を直してきたところに、私はKENZOの誠実さを感じます。

いま分かっている逮捕の中身

今回KENZOは、2025年6月に投稿した動画で、京都の不動産会社の元代表の男性を「詐欺師」と呼んだことで、名誉毀損(人の評価を下げる話を広めること)の疑いをかけられています。

男性は動画が出た翌月に亡くなり、母親が告訴していました。

京都新聞などによると、KENZOはこの動画を、会社の売り買いをめぐって男性と揉めていた岡山の不動産会社の依頼で出していたとみられています。

遺族側の訴えでは、KENZOは男性と岡山の会社側が話し合っているところへいきなり現れて、本人の了解をとらずにカメラを回していたそうです。

その会社の関係者2人も、男性からお金を脅し取ろうとした恐喝未遂の疑いで、同じ日に逮捕されました。

KENZOは調べに対して「弁護士と話してから話す」と答えていて、本人の言い分はまだ分かっていません。

 

KENZOに相談できないいま、勧誘で迷ったら、消費者ホットラインの「188(いやや)」に電話してみてください。

住んでいる地域の消費生活センターにつないでもらえ、契約を解除できるクーリング・オフが使えるかも一緒に確かめてもらえます。

逮捕で問われることは問われるとして、泣き寝入りしかけた人の話を聞きに相手のもとまで出向いたKENZOの姿まで、なかったことにはできませんよね。