『薬屋のひとりごと』の第3期で、エンディングの終わり近くに流れる「アニメーション制作」の一行が、ファンのあいだで話題になっています。

後宮で働く薬師の少女・猫猫(マオマオ)が、毒や薬の知識で事件を解いていくこの物語は、2026年10月2日から日本テレビ系で第3期が始まりました。

見ていて「なんだか絵が違う」と感じた人の声は、Xにもいくつも上がっています。

その答えを探して調べた人たちが行き着いたのが、エンディングの一行でした。

1期と2期では「TOHO animation STUDIO×OLM」と2つの会社の名前が並んでいたのに、3期は「OLM」だけになっていたんです。

 

では、TOHO animation STUDIOは薬屋から離れてしまったのか。

公式サイトのスタッフ欄を1期から劇場版まで見比べると、離れたのではなく、劇場版の側へ移っていたことが見えてきます。

そして3期の違和感は、制作会社の名前だけでは説明しきれないところもありました。


公式の表記はこう変わった

公式サイトに載っている作り手の名前は、シリーズごとにこう移りました。

  • 1期(2023年10月から):アニメーション制作はTOHO animation STUDIO×OLM。監督とシリーズ構成は長沼範裕さん
  • 2期(2025年1月から):アニメーション制作は同じ2社の連名。長沼さんは総監督とシリーズ構成に回り、監督は筆坂明規さん
  • 3期(2026年10月から):アニメーション制作はOLMだけ。監督は筆坂さんで、長沼さんはシリーズ構成
  • 劇場版(2026年12月11日公開):アニメーション制作はTOHO animation STUDIOだけ。監督は長沼さん

2つの会社の名前が、3期と劇場版できれいに1つずつに分かれています。

TOHO animation STUDIOは東宝グループのアニメ制作会社で、OLMは『ポケットモンスター』のアニメなどを手がけてきた制作会社です。

人の動きも同じ形をしていて、1期で監督だった長沼さんは2期で一歩引いた「総監督」になり、1期で副監督だった筆坂さんが監督を引き継ぎました。

そして3期の監督は筆坂さん、劇場版の監督は長沼さん。

公式の説明はありませんが、こうして並べると、2期はテレビと映画を2つの班に分けるための引き継ぎの期間だったようにも読めます。

 

3期の放送が4話まで進んだ10月下旬には、この分かれ方に気づく人も出てきていました。

それでも、作品のまわりにはTOHOの名前がいまも残っています。

キャラクターデザインの中谷友紀子さんは3期と劇場版の両方に名前があり、劇場版では絵の仕上がり全体を見る「総作画監督」も務めています。

3期の放送中にも「presented by TOHO animation」と名のつくポップアップショップが開かれていて、グッズや宣伝の面では、TOHO animationはいまもこの作品の顔のひとつです。

Xには「TOHO animationとの共同をやめたのか」という声も出ていましたが、それは半分だけ当たっていて、やめたのは「一緒に作る」ことだけでした。


TOHOは劇場版の側へ

劇場版『薬屋のひとりごと 亡妃の秘宝』は、原作者の日向夏さんがストーリー原案を手がける完全新作です。

公開は12月11日。

3期の放送が始まって2か月あまりで、映画館でも新作がかかる日程が組まれています。

12月に公開する映画なら、その仕上げは3期の作業と同じ時期に重なっていた計算です。

劇場版の美術監督と撮影監督はテレビとは別の人が務めていて、映画のために班を組み直していることも、スタッフ欄から読み取れます。

 

テレビと映画が同時に進んでいることに気づいたファンからは、こんな受け止め方も出ていました。

1期と2期を2社で作っていたことが、最初から分かれるための準備だったのかどうかは、公式には書かれていません。

スタッフ欄にあるのは名前だけで、なぜ分けたのかという説明は、公式サイトのどこにも見当たらないからです。

外から言えるのは、3期の前半と映画1本を、同じ秋から冬にかけて続けて出す日程だということまで。

その日程のなかで、片方の会社がテレビを、もう片方が映画を受け持つのは、どちらの仕上がりも落とさないための分け方としては筋が通っています。

 

ただ、画面の前で見ている私たちに残ったのは、「いつもの薬屋と何か違う」という手ざわりでした。


違和感は作画だけじゃない

3期が始まった10月、Xには「作画が変わった?」という声が次々に上がっています。

とくに多かったのが、壬氏(ジンシ)の顔と声についての投稿です。

壬氏は、猫猫が仕える美しい青年で、本当は皇帝の弟という身分を隠して後宮の宦官として振る舞ってきた、物語のもう一人の主役。

「顔の雰囲気が違う」「声が低くなった」という受け止めが重なって、それが3期の評判の中心になっていきます。

 

その流れのなかで、作画の話題でもひときわ広く読まれたのが、この投稿です。

壬氏は2期の最終話で顔に傷を負い、物語のなかでの立場も大きく動きました。

3期の壬氏が疲れて見えるのは、きらきらした姿を取りつくろうのをやめた男として描かれているから、というのがこの投稿の読み方です。

そう考えると3期の違和感には、制作の体制が変わったことと、壬氏という人物が変わったことの2つが重なっていることになります。

 

私たちの記憶も、少し関係していそうです。

「1期と2期を見直した直後に3期を見たら違って見えた」という声もあり、1期の放送からちょうど3年たったいま、頭の中にいるのは、いちばん美しかった場面ばかりを集めた壬氏なのかもしれません。

もちろん、3期の絵が好みに合わないと感じるのは自然なことで、どちらが正しいという話ではないはずです。


制作会社の見方3つ

ほかのアニメで「作画が変わった?」と感じたときも、エンディングの一行の読み方を知っていると、慌てずに済みます。

  • 「製作」と「制作」は別もの。製作委員会はお金を出して作品を持つ側で、アニメーション制作は実際に絵を動かす会社
  • ブランドとスタジオも別もの。TOHO animationは東宝のアニメ事業の名前でグッズや宣伝にも出てくるが、絵を作るのはTOHO animation STUDIO
  • 会社の名前のあとに人の名前を見る。監督、キャラクターデザイン、美術監督までたどると、どこが入れ替わったのかが分かる

3つ目で薬屋の3期をたどると、長沼さんの役目が変わったことを除けば、監督の筆坂さん、キャラクターデザインの中谷さん、美術監督、色彩設計、撮影監督、編集まで、スタッフ欄に載る名前は2期とほとんど同じです。

会社の名前は1つ減ったのに、名前の並びはほぼそのまま。

変わったところがあるとすれば、スタッフ欄には載らない、一枚一枚の絵を描く人たちの顔ぶれでしょう。

 

劇場版と時期が重なったことを、作り手の苦労として受け止める声もあります。

3期は放送を2回に分ける形で、後半は2027年4月から始まります。

劇場版を送り出したあとの春に、テレビの薬屋がどんな顔で戻ってくるのか。

エンディングの最後の一行と壬氏の横顔を、春にもう一度見比べてみたいですね。