2026年10月18日の横浜市長選で原沢あつみが初当選してから、「残念」「この先が不安」という声が上がり続けています。

東京に住んだまま、4つの政党の後押しで勝ったうえに、翌日には朝鮮学校をめぐる発言の動画まで広まったからです。

住まいを聞かれて答えなかった動画や、無所属なのに4つの党がそろった応援ぶりで、選挙のあいだずっと「胡散臭い」と感じていた人にとっては、その違和感が、当選でそのまま「この先が不安」に変わったのではないでしょうか。

横浜の新市長・原沢あつみとは

原沢あつみ
引用元:原沢あつみ 公式サイト
  • 原沢あつみ(原沢敦美)・59歳
  • 職業=弁護士(企業のコンプライアンスが専門)
  • 経歴=日本航空の航空整備士を経て、40代で弁護士に
  • 住まい=東京都(5年前に横浜から転居・本人の説明)
  • 後押しした政党=自民・維新・国民民主が推薦(党として正式に応援)、公明は市議団が支持

この市長選は、前の市長の山中竹春がパワハラ問題で辞めたために、再選からわずか1年あまりで行われた出直し選挙で、辞めた山中竹春本人も立候補して7人が争いました。

原沢あつみは予備自衛官(ふだんは別の仕事をしながら、いざというときに自衛隊で働く人)でもあり、2019年には陸上自衛隊が自分たちの広報で、法務の仕事をする予備自衛官として本人を紹介していました。

経歴だけを並べれば立派ですが、本人も「私には政治経験も行政経験もありません」と認めているとおり、いきなり人口370万人を超える横浜のトップに立ちました。

選挙中に「胡散臭い」と言われた理由が気になる方は、原沢あつみはなぜ「胡散臭い」と言われてしまうのか?で詳しく読めます。

有権者の2割に満たない票で決まった市長

原沢あつみは市内18区のすべてで1位でした。

ただ、投票率は45.56%にとどまり、原沢あつみに入れたのは投票した人のおよそ4割なので、有権者全体で見ると、5〜6人に1人の票で市長が決まりました。

2位に入った参政党推薦の福山敦士(福山あつし)を応援した人からは、投票率の低さを悔やむ声も出ています。

しかも、ほかの6人の票はばらばらに分かれていて、6人の票を合わせると、原沢あつみの票を大きく上回っていました。

政党や団体がまとまって入れる票(組織票)は1人に集まり、それ以外の票は6人に割れていたことになります。

 

この票の割れ方を見ると、「4党相乗りの組織票に民意は勝てませんでした」と言いたくなる気持ちも、言いすぎとは言えません。

2位は参政党が推した37歳の福山敦士

2位に入った福山敦士を応援していた人たちのあいだでは、とくに「残念」の声が大きく上がっています。

福山敦士は参政党の推薦を受けた37歳の会社社長で、7人のなかでいちばん若い候補でした。

得票は23万418票で、2025年8月の前回の市長選で3位だったときの約14万8千票から、大きく伸ばしています。

共同通信の出口調査では、20代以下で福山敦士に入れた人が25%と、原沢あつみの28%に迫っていました。

 

「前の市長には戻ってほしくない、でも組織に担がれた人にも任せたくない」。

そう考えて福山敦士に入れた人にとっては、前回より票を伸ばしたのに組織票には届かなかったのですから、「残念」の声が出るのも無理はありません。

当選のあとに広まった朝鮮学校の発言

当選が決まってから、朝鮮学校への補助金をめぐる原沢あつみの発言の動画が、大きく広まっていきました。

横浜市は、北朝鮮をめぐる国際情勢を理由に、2013年度から市内の朝鮮学校への補助金を止めています。

止めたのは、2009年から2021年まで市長を務め、自民党などが支えた林文子市長の時代で、市は「ミサイル発射など、我が国の平和と安全に脅威を及ぼす状況に改善が見られない」と説明してきました。

動画の中で原沢あつみは、「不勉強で申し訳ないんですけれども」と前置きしたうえで、補助をやめた理由を見極めて「再検討する必要はあるとは思いますが、基本的には横浜に住んでいる子どもたちですので、平等に教育は受けさせてあげたい」と答えています。

 

この動画は選挙中の討論会での受け答えで、当選の前から一部では話題になっていましたが、多くの人は当選が決まってから初めて知りました。

 

そして当選のあと、日本保守党の特別顧問で前衆院議員の島田洋一が「『再検討』は、少なくともまず、北が拉致被害者を全員返してからだ」と書いたように、北朝鮮による日本人の拉致問題が解決していないなかで補助の話が出たことに、強い怒りの声が上がっています。

4つの党の推薦を見て原沢あつみに入れた人のなかにも、朝鮮学校への補助をめぐるこの考えを知らないまま投票した人はいたはずです。

しかも、13年前に補助を止めた林文子市長を推したのも、見直しを口にした新市長を推したのも、同じ自民党でした。

補助を止めた側の自民党が担いだ人の口から、今度は見直しの言葉が出てきたわけです。

選挙の翌日の10月19日には、この選挙で浅賀由香を立てた共産党の横浜市議団が新市長への談話で「朝鮮学校への補助金再開」を早くも求めていて、原沢あつみは就任してすぐに、この話にどう答えるのかを迫られることになりました。

 

その答えは、翌20日の就任記者会見で出ています。

産経新聞によると、原沢あつみは朝鮮学校への補助金について、「前向きに検討すると言ったことは、おそらく一度もない」と話しました。

「国籍を問わず、全ての子供は平等に教育を受ける権利がある」としながらも、補助金を出すかどうかは別に考える必要があるとし、補助を止めている今の形も、そうした検討を経た判断ではないか、という見方です。

そのうえで、「今の状況を何か変える必要があるのかどうかは、考えていない」と答えています。

討論会で口にした「再検討する必要はある」と並べるとずいぶん引いた言い方で、少なくとも、すぐに補助を戻す考えはなさそうです。

まだ語られない横浜への引っ越し

当選のあとも、住まいの話はくり返し出ています。

原沢あつみは選挙中の10月12日、「市長に当選することができましたら、必ず横浜市内に戻ってきます」と約束していました。

ところが、当選の夜のお礼の投稿にも、19日に報じられた本人の言葉にも、引っ越しの時期は出てきません。

 

19日に原沢あつみは、「今、停滞している市政を元に戻すというところから始める」「まずは市職員の職場環境づくりから始めたい」と、市政の立て直しから始める考えを語っていました。

選挙中は東京の住まいにいちばん疑問の声が上がっていたので、真っ先に「いつ戻るのか」を聞きたかった人も多いでしょう。

 

10月20日、原沢あつみは市役所に初めて登庁し、拍手で迎えられて「きょうから気を引き締めて頑張ってまいります」とあいさつしました。

午後の初めての記者会見では、ハラスメントをなくす決まりづくりや、IR(カジノを含む施設)は誘致しないことまで語られています。

ところが、会見を伝えた新聞やテレビの記事には、「必ず横浜市内に戻ってきます」という約束の時期を本人が語ったという話は出てきません。

原沢あつみの当選に「残念」の声が消えないのは、朝鮮学校の問いには答えても、選挙中にいちばん聞かれていた「いつ横浜に戻るのか」の答えが、まだ出てきていないから、なのかもしれませんね。