2026年10月20日の19時6分、お笑いコンビ・霜降り明星の粗品がXに「スポニチへ」で始まる投稿をしました。

中身は、スポーツニッポン(スポニチ)が翌日の紙面に載せる予定の記事を、取り下げるように求めるものです。

「今日22時までに『取り下げます』と以下に連絡をしなさい」という一文の下には、名前の部分がそのまま「粗品vsスポニチ」になっている、この件のためだけに作ったメールアドレスまで書かれていました。

取り下げなければ「今後一切粗品を取り扱わせません」と、これからの取材や会見の扱いまで持ち出しています。

 

この投稿でまず笑いを誘ったのは、このメールアドレスでした。

そして22時を過ぎても取り下げの連絡は来なかったようで、粗品は自分のYouTubeの生配信で、自分が審査員を務めるお笑い番組『ツッコミスター』を、大晦日の夜から元日にかけての年またぎで放送すると発表しました。

発表のあとにはXに「スポニチざまあみろ」と投稿していて、スポニチがつかんでいたのもこの番組の話で、スポニチは翌21日の朝4時に、同じ特番の記事を配信しました。白いネクタイに着替えての発表に、結婚の報告かと身構えた人が多かったぶん、拍子抜けした人も多いですよね。

粗品のプロフィール

粗品
引用元:粗品 Official Channel「スポニチへ」
  • 1993年1月7日生まれ・大阪市福島区出身・33歳・所属は吉本興業
  • 2013年1月にせいやとお笑いコンビ「霜降り明星」を結成
  • 2018年に漫才の日本一を決める「M-1グランプリ」で優勝・2019年にピン芸人の大会「R-1ぐらんぷり」で優勝
  • 2024年2月からYouTubeで、前の週に話題になったニュースを1人でいじる時事コント「1人賛否」を毎週配信(2026年4月に終了)
  • 2025年12月の「女芸人No.1決定戦 THE W 2025」で審査員
  • 2026年5月に放送されたフジテレビの特番「ツッコミスター」でMCと審査員

11月には名古屋・大阪・東京を回るツアー「覚悟の鬼」と、その3会場だけで売る新しいアルバム「怪獣と鬼」が控えています。

「22時までに取り下げなさい」という警告

粗品は同じ夜、YouTubeにも「スポニチへ」という動画を上げています。

動画はXに投稿する直前から撮り始めていて、カメラの前で投稿ボタンを押すところまでが映っていました。

投稿の前には「僕の独断じゃなくて」と話し、所属事務所に確認を取りつつ、最低限のモラルは守った文言にしたと説明しています。

そのうえで、「エンタメ風にしてるけど、これもガチやから、あまりなめといてほしくない」と念を押しました。

「ちょっと今興奮してて、かなり頭に血がのぼってて」と自分でも言うほどで、冷静に話そうとしながらも、ところどころで声が強くなる場面も。

その一方で、「なんで俺が当事者やねん、こんなん誰かがやってたら一番おもろいのに」とこぼす場面もありました。

 

専用のメールアドレスを作ったのは、いたずらのメールに埋もれないためで、スポニチの人間だと分かる形で連絡してほしい、と頼んでいます。

取り下げの連絡が来れば「円満に終わりました」とちゃんと報告する、という約束つきです。

「金を稼ぎたいのなら」という言い方

投稿の書き出しは「今後も粗品の事を記事にし、金を稼ぎたいのなら」でした。

「二度と書くな」ではなく、「これからも粗品で稼ぎたいなら」という条件の形になっています。

動画でも、取り下げてくれるなら、これまでと変わらず好きに書いてもらっていい、とまで話していて、スポニチに突きつけたのは絶縁というより、この1本だけは下ろしてくれ、ほかは今までどおりでいいという取引に近い中身です。

 

「取り扱わせない」という言葉も、取引をする側の言葉です。

粗品は動画の中で、自分のことを「粗品というコンテンツ」と呼び、その情報を取り扱いにくくさせる、という言い方をしていました。

自分のことを書いて売るなら、書かせるかどうかは自分が決める、という言い方です。

 

文の終わりも「取り下げなさい」「連絡をしなさい」と、先生が生徒に言うような「なさい」でそろえてあり、先生に叱られているような文面だと笑う人もいました。

落ち着いた文面なのに、期限の時刻と連絡先だけはきっちり決めてあって、そこがおかしくもあり、少し怖くもあります。

「ざまあみろ」まで言った大晦日の発表

投稿のあと、粗品は20時39分からYouTubeで「スポニチ待ち(切り抜き禁止)」という生配信を始めました。「切り抜き禁止」は、配信の一部を切り取ってほかで広めないでほしい、という意味です。

配信を見ていた人たちの投稿によると、22時を過ぎてもスポニチから取り下げの連絡は来ず、粗品は黒いネクタイから、結婚式を思わせる白いネクタイに着替えてから、たっぷり間を取って、22時11分ごろに発表したといいます。

その中身が、「2026年12月31日、大晦日の年またぎでツッコミスターをやります」でした。

その7分後の22時18分には、番組の公式Xも「2026/12/31 大晦日 年またぎ」と書かれた告知画像を出し、配信での発表が正式なものだと裏づけました。

日刊スポーツによると、放送は12月31日の22時から24時45分までで、粗品は発表の前に「本来、この話は11月末ぐらいにしようと思っていた」と話していたといいます。

本来の予定より、1か月ほど早い発表だったことになります。

 

「ツッコミスター」は、粗品がMCと審査員を務めるフジテレビのツッコミ芸人No.1決定戦です。

2026年5月23日に、フジテレビの土曜夜の特番枠「土曜プレミアム」で初めて放送され、出場者選びからお題、審査まで粗品が担当し、放送界の賞であるギャラクシー賞の5月度の月間賞にも選ばれました。

もとになったのは、2024年12月に粗品のYouTubeで始まった企画「ツッコミマン」で、自分のチャンネルから地上波へ育ててきた番組です。

 

発表の前、ネットにはこんな予想が並んでいました。

  • 結婚などのおめでたい報告(相手としてタレントで歌手のあの〈あのちゃん〉の名前が挙がったが、2人は2024年5月30日に交際を否定している)
  • 年末のM-1グランプリの審査員
  • 先輩の漫才コンビ・スーパーマラドーナの武智との因縁(粗品が以前、YouTubeで嫌いな芸人の名前をピー音で伏せて挙げ、武智ではと噂された)
  • 競馬予想で名乗っている「生涯収支マイナス5億円君」が、毎年秋の菊花賞のころに「6億円君」へ名前を変える話
  • 10月9日から体調不良で休んでいる相方・せいやに関わる話
  • そもそも話題づくり・番組の宣伝

発表のあとには「粗品ただの番宣かよ やられた」という声も上がりました。

 

そして配信を終える前の22時44分、粗品はXにひとことだけ投稿しました。

スポニチがつかんでいた大晦日の番組の話を、粗品が自分の口から先に出してみせた形です。スポニチのニュースサイトに同じ特番の記事が載ったのは、日付が変わった21日の4時でしたが、出どころは「関係者によると」とあるだけで、粗品が前の晩に自分で発表したことは書かれていません。

粗品が最後までこだわったのは、記事に書かれる中身よりも、誰の口から最初に伝わるかでした。

発表までの配信で粗品がどんな段取りを踏み、怒りを大晦日の番組の宣伝へ変えていったのかは、粗品がスポニチ騒動をチャンスに変えた手腕が天才すぎる話で追いかけています。

先に書かれた交際と自分で伝えた結婚

自分の口で話す前に私生活を報じられた経験は、粗品には前にもあります。

2019年9月、写真週刊誌のFRIDAYが、当時の交際相手でのちに妻となる女性との同棲を報じ、粗品はすぐにラジオで交際を認めました。

同じ年の大みそかには、スポニチが「結婚を視野に入れている」と報じています。

粗品本人が結婚を発表したのは、それから2年後の2021年12月30日、霜降り明星のYouTubeチャンネルの配信の中でした。

離婚も同じで、2023年7月13日に自分のYouTubeチャンネルの生配信で、その年の4月に離婚していたことを自分から明かしています。

記事の見出しで知るより本人の口から一番に聞きたい、という気持ちはファンにもあって、「理由は知らんけど、オレは粗品を応援する」と、中身が分からないまま粗品の側に立つ声もすぐに上がっていました。

「取り扱わせない」は本当にできるのか

「そんな権限も粗品にないしな」「ニュースは許可制じゃないので」という声も少なくありません。

実はこの点は、粗品自身も認めています。

法的にどれくらいの効力があるかと言えば「結構薄いと思う」、取り扱わせないことは「実は無理やと思う」と話し、警察に駆け込んでも止まらないだろう、とまで言っていました。

タレント個人の意向は「めっちゃ弱っちい」もので、本当にものを言うのは、どれだけ力のある事務所が間に入るかだ、ということも分かったうえでの話です。

そのうえで粗品が挙げたやり方は、次の3つです。

  • 自分から発信する会見に、スポニチを呼ばない(NG媒体にする)
  • ネットニュースになりそうな話は記者会見を増やして先に出し、スポニチだけが遅れる形にする
  • (できるかどうかは別として)スポニチが粗品の記事を出すたびに、毎回抗議する

このうち2つ目の、スポニチだけが毎回ほかの新聞やネットメディアに遅れる形について、粗品は「致命的ですからね」と言い切っていました。

 

ただ、すぐに効く話だとは本人も思っていないようで、「俺は長期的に見とる」と繰り返します。

抗議するたびにスポニチの記事が注目されて、読まれる数が少しは増えることも、本人は認めていました。

それでも、やめてと言われ続けているのに書き続ける新聞社を、読む側がこの先どう見るかは分からないとしたうえで、「これっておかしくないか」という声は正しく伝わりつつあると信じている、と話しています。

 

スポニチは、本人のひと声で独自の記事を下ろす前例は作らなかった代わりに、粗品の言葉どおりなら、この先は粗品の会見に呼ばれない側に回ることになります。

さらに粗品は、スポニチ以外の媒体にも釘を刺していて、本人が発表する前に同じ情報を出したところも、同じようにNG媒体にする、とも付け加えました。

1人賛否で人をいじってきた粗品への批判

批判の声でとくに目立ったのは、他人の記事を面白おかしくネタにしてきたのに、自分が記事にされると怒るのはおかしくないか、という言い分でした。

粗品のほうこそ人をいじってお金を稼いでいるのでは、という声もあり、「1人賛否」で毎週だれかがいじられるのを見てきた人なら、そう言いたくなりますよね。

「それが嫌なら粗品も過去の動画を消しなさい」と、粗品の「なさい」をそのまま返すような声もありました。

 

この点について、粗品はかなり長く語っていました。

「1人賛否」をやっていた時期は、大げさな見出しのネットニュースを芸能人の中でいちばん食らっていたし、印象操作も、間違った情報で叩かれることも、全部「大きい器で許してきた」と言います。

むしろ、印象操作されることを逆手に取った芸風を続けてきた、とまで話していました。

 

その1人賛否は、2026年4月27日の動画で終わりが告げられ、理由は「自分のステージが1つ上がったから」という説明でした。

粗品は、自分がMCを務めるABEMAの番組で、お笑いコンビ・鬼越トマホークの金ちゃんが週刊誌の記者に話を聞きに行ったとき、記者の側から「1人賛否をやめたのは業界に大打撃だ」という声まで出た、とも明かしています。

Yahoo!ニュースに1回載ると週刊誌やスポーツ紙に100万円が入るらしい、と聞いた話まで持ち出し、それだけ自分の話でお金が動いていると知っていても、文句ひとつ言わなかった、と話していました。

 

ただ、まったく線を引いてこなかったわけではありません。

2025年12月24日には、「1人賛否」での自分の発言を書き起こしたネット記事に対して、Xで「偏向が過ぎる」と警告しています。

芸能ライターの田辺ユウキがYahoo!ニュースの解説記事で伝えたところでは、歌手でプロデューサーのSKY-HIをめぐる報道を扱った回の発言が、企画の趣旨とは違って擁護しているだけに読める形で記事になっていて、その記事は削除されたといいます。

前回は切り取り方、今回は出す順番と、粗品が怒ってきたのは、記事にされること自体ではなく、いつも扱われ方でした。

 

今回の動画で粗品が例に挙げたのは、YouTubeやラジオ、テレビで自分が話したことを、そのまま文字にした記事でした。

独自の取材をせず、すでに表に出た話だけで組み立てる、いわゆる「こたつ記事」と呼ばれる種類で、粗品の言い方では「誰でもできること」です。

今回止めようとしているのは、それとは違い、本人がまだ口にしていない話を先につかんで出す記事です。

批判の声への返信でも、「今回は初報をやめろ、です。これまでのは、記事の二次利用です。似て非なるものです」という見方が多くの共感を集め、「粗品って誰かの未出情報を勝手に初出ししてるんですか!?」と、批判した人へ皮肉で返す人もいました。

粗品の「然るべきタイミングで俺の口から発表する」という言葉には、「然るべきタイミングじゃないから金を稼げるんでしょ笑」という返しもついていて、新聞にとっては、本人より先に出せることこそが記事の値打ちです。そこは、自分の口で言いたい粗品と、どうしてもぶつかります。

いじられること自体が嫌な人なら、これまでの記事にも全部怒っていたはずです。書き起こし記事の多くは笑って流し、扱い方がおかしいときだけ声をあげてきた粗品が、今回は初報を止めに来た。批判する側の見方だけでは、この違いは説明できません。

 

粗品は、先回りして紙面に出すのは「ルール違反やと思う」と言い切り、「今までまかり通ってて、ここまで行動を起こして声をあげる芸能人がいなかっただけ」とも話しています。

紙面より先に、自分の配信で溜めに溜めて発表してみせた粗品が守りたかったのは、大事な話を自分の口から伝えることだったのでしょう。